人との出会いが織り成す物語

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浅草ギングリッチで開催されている、イアン・ブルジョー絵画展。
イアンさんが来日しているとの情報を聞き、お話を伺ってきました。

アルカディア・インターナショナル書店(以下アルカディア)は、フィンランドのツアーブックでは必ずと言って良いほど掲載される有名店。このアルカディアのオーナーでもあるイアンさん。なぜ絵画展を行ったのか、インスピレーションはどこから来るのか、そしてアルカディアの話。やはり「人」がキーワードでした。

–アルカディアは、日本人向けのフィンランド観光ブックでは必ずと言って良いほど掲載されますよね

実際に見て、びっくりしています。僕がやっている書店がこんなにも遠い国の方々に情報として届いているのは本当に光栄なことです。

–アルカディアはいつオープンしたのですか?

2008年3月14日にオープンをしました、戦時中は防空壕としても使われていた建物なので、地下は2階まであります。

–アルカディアをオープンする前は何をされていたのでしょうか?

語学学校の経営をしていて、講師もしていました。

–ご自身でアルカディアをオープンさせた理由は何だったのですか?

最初の妻が亡くなった時、自分は何をすべきかが分からなくなってしまったのです。そして残された3人の子供を養うために、少しでも足しになればと、私の膨大な本のコレクションを売ることにしたことがきっかけでした。

–今では、アルカディアが地域の交流場所になっていると聞きました

そうですね、僕はアルカディアを象徴する言葉を表す時、「寛容」という言葉を使うのですが、常にオープンであり、様々な方の交流の場になって欲しいと思っていたので、アルカディアで様々なイベントが行われることを、とても喜ばしく思っています。

–今回は、この場所をアルカディアのポップストア的な形でお披露目もしていますが、メインはイアンさんの絵画ですね。絵は昔から描かれていたのでしょうか。

大学の授業中、教授の話が頭に入ってこなくて、うわの空になってしまい、絵を描き始めたのがきっかけです(笑)。それ以降、何か大事なものに集中すべき時、絵を描くことが助けてくれたような気がします。

–この日本で絵画展をやるきっかけは何だったのでしょうか?

今回の絵画展のオーガナイザーでもあるケイコ(村手ケイコさん)との出会いですね。彼女がアルカディアに1度来てくれたことがあり、その時は何もなかったんですが、また半年後くらいに来てくれたんです。その時自己紹介をして、仲良くなったんです。ケイコのその時の滞在時には、何度もアルカディアに足を運んでくれて様々な話をするようになり、その時に僕が絵を描いていることを話したら、すごく興味を持ってくれて、評価をしてくれたんです。

その後、アルカディアで僕の個展イベントをやったら多くの方に見てもらうことができて新しい喜びを得ることができました。この話を日本にいるケイコにも報告していたのですが、ケイコから「日本で絵画展をやりませんか?」というオファーをもらって、2つ返事で「やる!」と、出会いでこの絵画展につながったのです。

–とても素敵なお話です。日本にいらっしゃったことは初めてとのことですが、日本の印象はいかがでしょうか?

とても素晴らしいです!今回は4日間の滞在で、この絵画展に少しでも長くいようと思っているので、浅草以外のところはいけないのですが、この浅草という場所、そしてここの人々に感銘を受けています

–具体的なエピソードがあったのでしょうか?

僕は、路地を歩くのが好きで、まずこの浅草には路地が本当に多いことが素敵。もちろん色々歩いていると迷ってしまうんですが(笑)、迷ってもいろんな人が助けてくれる。僕は日本語が話せるわけではないので、身振り手振りになってしまうんですが、皆さん親切に助けてくれる。本当に素晴らしい国だと感じています。昔から日本という国が気になっていて、行ってみたかったのですが、ようやく実現して感激しています。

–ちなみに、イアンさんが日本を気になり始めたのはいつ頃から?そしてどのようなきっかけだったのでしょうか。

それは40年前、僕が15歳の時までさかのぼることになります。当時、マレーシアのクアラルンプールに住んでいて、誕生日のお祝いに日本料理の「鉄板焼き」に父親が連れて行ってくれたんです。当時でもクアラルンプールは中華料理やインド料理、マレーシア料理の有名なお店はあったんですけど、この鉄板焼きのお店が持つ上質感、特別感が抜きんでて素晴らしくて、日本に興味が出た最初のきっかけです。

そして父親が日本車に乗っていたのですが、車の中にある小さなボタンに魅了されたのを鮮明に覚えています(笑)。

–小さなボタンですか?

はい、車の中に設置されてある様々なボタンです。ハザードランプやウィンドウ用、クーラー用、車に乗るたびにいろんなボタンを押して遊んでいました。
アメリカの車やBMW等の車も大きかったり、印象が強くて素敵なんですけど、僕は小さいながらも機能美溢れる日本車が好きだったんです。

そしてSONY製品、これも昔から好きなブランドで、今では銀行や保険などのビジネスも手がけていますが、SONY製品は今でも愛用をしています。

–日本の文化的側面で思い出に残っているところはありますか?

17歳の時、アメリカのサンフランシスコに住んでいたのですが、そこで日本映画にはまりました。黒澤明、小津安二郎もその時知り、いろんな作品を見たのを記憶しています。
そして文学でいうと遠藤周作にとても感銘を受けました。彼は僕にとって重要な人です。彼は純粋な日本人なのに、カトリックという側面もあります。

例えばここにガラスのコップがあります。僕が見てもガラスのコップだし、あなたが見てもガラスのコップです。誰が見てもガラスのコップというのが認識できます。ただ、例えば僕が、このガラスの僕側の面に何か文字を書いたとしましょう。あなたに見せないように。その場合、僕がいくら「ここに書いたよ」と言ってもあなた側からはわからない。

説明するのが難しいのですが、この同じ空間に同じ人間がいても、カメラ撮影をする人、質問をする人、答える人、それぞれの役割が違う。同じ物や人間でも見方を変えると全く違う世界に見えてきます。

僕は、この見方を遠藤周作から学んだような気がするのです。それは僕の人生を変えるくらいのインパクトがありました。

–サン=テグジュベリの「星の王子様」を彷彿させますね、このお話は。

そう、本当にそれと一緒かもしれない。自分が大事にしていることは他人も一緒とは限らないとかね。僕が若い頃に遠藤周作の作品に出会えたのは幸運の一つだと思っています。

–絵も拝見させて頂きましたが、絵のアイディアはどうやって思いつくのでしょうか?

道すがら、写真の中で目が止まった些細な何かから、誰かが話した何かから、本当に様々なシーンでアイディアは湧いてきます。先ほどの見方の変化ではないですが、アイディアを引き出すものはとっても変化に富んでいて、多様なものです。

–我々LifTeは、「手のぬくもりに溢れた、豊かな生活」を読者に伝えていっています。イアンさんにとって「豊かな生活」とは何でしょうか?

そうですね、国という括りで考えると、北欧は豊かだと思っています。フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、アイスランド、北欧諸国は大きい国ではありません。ただ教育水準や、医療分野で見た時、どの国々と比べても高水準でかつ平等に享受することができます。これは僕が過去様々な国で生活をしてきて、目の当たりにしてきた経験から言えることです。ここの部分というのは「豊かな生活」にとても大事な部分だと思います。

精神的な部分でいうと、僕にとって大事なのは「60年代のデザイン」です。それは色だったり、家具だったりもするのですが、ナチュラルな木で作られた家具に囲まれると本当に幸せな気持ちになります。

そして、今この瞬間も幸せを感じます。ずっと来たかった日本にこんな縁でこれることができた。この上ない幸せなことです。

この先、もしチャンスがあるのであれば日本でもアルカディアをオープンさせたいと思っています。

【インタビューを終えて】

視点の多様性、そして人との関わり

イアンさんが創り出す絵は独特でメランコリーな雰囲気があり、
各作品のタイトルも独特で、詩的なアプローチも感じさえします。

これは物事を多様に見られるイアンさん独自のアプローチ。
今まで10か国以上で生活をしてきた、経験値から生まれるもの。

そして、その多様性は日本文学が実は影響している。

語学学校から書店オーナー、そしてアーティスト。

はたから見ると、異色な経歴に映りますが、恐らくイアンさんにとっては、自然な流れだったのかもしれません。

人との関わりを大事にする

ものすごくシンプルな事、でも誰しもができない事。
イアンさんはそれを自然と実践してきた人なのだと強く感じました。

「イアン・ブルジョー絵画展」

イアンさんは7月4日(火)にフィンランドへの帰路につきましたが、絵画展は15日(土)まで開催。
イアンさんが描いた絵はもちろん、アルカディアの建物模型も素敵です。
イアンさんと村手さんが厳選したアルカディアで販売していた本も購入可能。

気になった方は、ぜひイアンさんの想いが詰まった絵画展に足を運んでみてください。

The Home of a Modern Man
イアン・ブルジョー絵画展

会期:2017年7月1日(土)〜7月15日(土)
平日 14:00〜21:00
土日祝 12:00〜21:00
※水曜休
会場:GINGRICH(ギングリッチ)
東京都台東区寿3-8-4鎌田ビル
東京メトロ銀座線 田原町駅より徒歩5分/都営大江戸線 蔵前駅より徒歩2分
https://goo.gl/maps/gGyxC537dTL2
ウェブサイト
https://ian-gingrich.localinfo.jp/
インスタグラム
ian_gingrich

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