11月4日に立教大学 池袋キャンパスで行われた、「『ヴィンランド・サガ』からみたアイスランド」に行ってきました♪
このイベントは、ヴィンランド・サガ』の原作やアニメの背景となる9世紀〜11世紀にかけてのヴァイキングの世界について、学問的な視点からの解説と討論がされるトークセッションイベントで、スペシャルスピーカーとして原作者の幸村誠さんも登壇して行われました。
|ヴァイキングの世界を描いた『ヴィンランド・サガ』
まず、知らない方に『ヴィンランド・サガ』簡単に紹介しましょう。
舞台は10世紀〜11世紀の北欧。当時暴力の限りを尽くしたと言われているヴァイキングの世界を描いた作品です。
個性豊かなキャラクター達の成長はもちろん、少ししか登場しないいわゆる端役も、丁寧に描かれていて、心を鷲掴みにされます。
そして『ヴィンランド・サガ』は、細かく描かれた背景描写と、当時の生活様式が分かりやすく描かれていることが、高く評価されています。
今回のイベントは、ヴァイキングの歴史に造詣が深い方々が登壇し『ヴィンランド・サガ』を熱く語るものでした。
|ヴァイキングが寄与した北欧経済の活性化
まずマイクを持ったのは、立教大学文学部の小澤実教授で、「ヴァイキングとは何か?」を中心に語ってくれました。
ヴァイキングは、一般的に「日本の奈良〜平安時代(8〜11世紀半ごろ)にかけて故郷北欧をユーラシア西部に進出した北欧出身者のこと」を指すそうです。
あくまでイメージですが、"ヴァイキング"と聞くと、怖いとか凶暴などのマイナスなイメージを持つ方も多いかもしれませんが、小澤教授が教えてくれたのは「ヴァイキングによる経済の活性化」でした。
「彼らは、船を使い様々な国に渡ります。渡航する際に、様々な商品を持ってそれを貨幣に変えていました。具体的に言うと北欧からは、奴隷の他、毛皮・コハク・タカ・セイウチやイッカクの牙やなどの特産品を輸出して、東方で大量に生産されていたイスラーム銀(ディルハム)に変えていたのです」。
「当時は銀貨ではない銀でも、重さで価値を決めていました。当時の墓の中から、武器の他に測りなども出土しているのはその証拠の一つでもあります。このような時代背景も幸村さんの原作やアニメにきちんと描かれています」。
|アイスランドで創られた"サガ"
次に登壇したのは、福井県立大学学術教養センター講師の松本涼さんで「サガ」について詳しく説明してくれました。
「そもそも「サガ」は、ヴァイキング時代が終わった100年後頃から当時の出来事を振り返って作れた散文作品群の総称です。分かりやすく言うと、当事者ではない人たちが「こうだったんだろうな」と言う考えや、想いも含まれて作られたおよそ200点以上の物語を総称して「サガ」と呼びます」。
「そのサガから、独自の解釈を入れながら創られているのが幸村先生の『ヴィンランド・サガ』ですが、驚いたのは本当に細かく調べられて物語を創り出している所です。実在したレイフ・エイリクソンを初めとした数々のキャラクター造詣の深さと、緻密で分かりやすい当時の生活様式です。アイスランドは木や森が少ないので、当時は芝土で家を作っていたのですが、この部分もきちんと描かれています」。
|奴隷拘束の描写には脱帽
3番目に登壇したのは、信州大学人文学部の伊藤盡教授。
伊藤教授が驚いたのは「奴隷」の描かれ方でした。
『ヴィンランド・サガ』の中でも奴隷が描かれていて、小澤教授が語ったように、当時、奴隷は商いの"商品"として利用されていました。
伊藤教授が驚いたのは「奴隷拘束の描かれ方」。
「奴隷制度の歴史は深く、被害になった人々はとても多い。本作品でも奴隷は登場し、奴隷という言葉で我々が想像する鎖や紐で拘束された描写も出てきます。しかし、私が驚いたのは、幸村先生が描いた、鎖や紐で拘束するのではない、新しい奴隷拘束の手法でした。与えられた作業をしっかりとこなせば"自由"を与えるという、奴隷に対してのモチベーションを与え、作業を熱心にやらせる。この拘束方法が実際に行われたのかは分かりませんが、あったと思わせるほどの説得力がある描写でした」。
「ここの部分は文献でも書かれていないので、実際どうだったかはわかりませんが、幸村先生が描く、奴隷にモチベーションを与えることによって働かせるシーンは、本当に素晴らしいと思います。学者の視点から見ても、とても新しい発見でした」。
|ヴァルハラ、そして幸村誠の世界観
3人の登壇が終わり、第2部では、いよいよ幸村誠さんも登壇し、4人でのトークセッションが行われました。当時のヴァイキングを彷彿させるコスチュームに身を纏っての登場で、会場も大きく賑わいを見せます。
トークセッションでは、幸村さんがアイスランドを訪れたエピソードや、『ヴィンランド・サガ』を描き出したキッカケなど様々な話が出ましたが、個人的に印象に残ったのが「ヴァルハラ」の話でした。
ヴァルハラとは
ヴァイキング達が戦う理由として考えられていたのは「ヴァルハラ」の存在でした。
サガでは、戦って死ぬと"戦乙女(ヴァルキリー)"がその者を迎えに来て、"天界の戦士の館(ヴァルハラ)"に住むことを許されると書かれています。
そのヴァルハラに辿り着きたい一心でヴァイキング達は勇猛果敢に戦ったと言われています。
当事者が残したものではないからこそ独創性が活きる
伊藤教授がヴァルハラに関してこう語ってくれました。
「サガは、当事者ではないヴァイキング時代が終わって100年以上経った時、ヴァイキング時代を振り返って様々な人たちが作った物語です。正直、本当にヴァイキング達が、ヴァルハラにたどり着くために戦ったかは分からないのです」。
伊藤教授がヴァルハラの信憑性に関して語った後に付け加えた幸村さんの言葉は印象的でした。
「でも、それだからこそ僕みたいな創り手が入り込めるのと、面白い作品ができる。正直面白ければ良い!という感覚が僕にはあります」。
幸村さんが手がける作品の魅力の1つは、想像したものから、徹底的にリアルに感じられるよう落とし込み、しっかりとエンタテインメントに仕上げている点だと個人的に感じています。
『ヴィンランド・サガ』の前に描いた、近未来の宇宙が舞台となった『プラネテス』という作品でも、未来の話なのに確実にこうなると思わせる説得力と、群を抜く面白さがあるのです。それゆえに、この言葉が彼の強さだと感じました。
登壇される方々の話が興味深く、あっという間の2時間。
現在まで残る200編もの"サガ"は、ヴァイキング時代が終わった100年後に作られたもの。
ヴァイキング時代が終了して950年以上が経過する現在。幸村さんの卓越した独自性、世界観によって『ヴィンランド・サガ』も、新しい"サガ"の1つとして残っていくのではないでしょうか。
|原作コミックとアニメの違いにも注目!!
もちろん『ヴィンランド・サガ』はコミックも発売されていますが、コミックと違う演出もあり、アニメも見逃せません。
例えばアニメの第1話で、主人公トルフィンの父トールズが戦う「ヒョルンガヴァグル」の戦い。
コミックで登場するシーンでは天候のことは深く触れられていませんが、アニメでは、おびただしい雹が降った描写が細かく描かれています。
これはアニメ製作スタッフが作り上げたもので、しっかりと幸村先生の世界観をより良いものにしようとする気持ちの現れです。
つまり、コミックを読んでいる方にも新しい発見があるのが、アニメ『ヴィンランド・サガ』なのです。
|『ヴィンランド・サガ』はアニメでも放映中!無料で観られる手法もあり!
7月7日から放映が開始していて、現在20話が終了したところ(2019.12.2時点)。これから放映をご覧になる方はそれ以降の回になってしまいますが、1話から観る方法があります。
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幸村誠さん著のコミック「ヴィンランド・サガ」は現在23巻まで発売中(2010.10.22現在)。アニメで原作を読みたくなった方にもオススメです♪
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