2025年9月に東京・リトアニア大使館で、在本彌生さんによる写真集『リトアニア!リトアニア!リトアニア!』(アノニマ・スタジオ刊)の刊行を記念したイベントが開催されました。
会場には多くの人々が集まり、和やかで温かい空気に包まれました。

「本は未来への橋に」—ジーカス大使の挨拶

冒頭の挨拶に立ったオーレリウス・ジーカス大使は、「本は世代をつなぎ、そして国と国をもつなぐ力を持っています」と語りました。
大使自身も著作の経験があり、本が持つ力をよく知る立場から、今回の刊行を心から喜んでいる様子が伝わってきます。
さらに「在本さんの写真集は、リトアニアという小さな国の姿を、日本人ならではの視点で丁寧に切り取っている。その一枚一枚が、未来への架け橋となるはずです」と述べ、日本とリトアニアの相互理解を深める文化的な意義を強調しました。
偶然の出会いが紡いだリトアニアとの物語

続いて登壇した在本彌生さんは、リトアニアとの出会いを振り返りました。
初めてリトアニアを訪れたのは2014年。雑誌の企画でバルト三国を巡る取材の最終地として、ラトビアから夜行バスで首都ヴィリニュスに到着した在本さんは、「この街とは気が合うかもしれない」と直感的に感じたといいます。
その後、偶然の出会いが重なり、地元の若者たちとの交流が自然と広がっていきました。
ヘアサロンで出会った女性に誘われて自宅を訪れたことをきっかけに、ルームメイトのマリアとも親しくなり、今も交流が続いているそうです。
「リトアニアでは不思議なほど人に助けられ、導かれるような体験が多かった」と在本さんは振り返ります。
旅の始まりは小さな偶然の連続でしたが、それこそが彼女にとって、この国と深く向き合うきっかけとなったのです。
大使が語る“3つの魅力”──写真集が映し出すリトアニアの本質

ジーカス大使は、この写真集の魅力を三つの観点から語りました。
まず一つ目は、「日本人ならではの感性」で切り取られたリトアニアの日常です。現地の人々にとってはごく当たり前の風景が、新鮮な視点によって改めて大切なものとして浮かび上がっている点に、大使は深い感動を覚えたといいます。
二つ目は、作品から感じられる文化と芸術の香りです。世界的に知られる映画作家ジョナス・メカスの存在をはじめ、随所にリトアニアの芸術的な精神が息づいていると評価しました。
そして三つ目は、「未来を象徴する若者たちの姿」。自由を大切にしながら前向きに生きる彼らのエネルギーが、リトアニアの未来そのものを体現していると語ります。
「この写真集は、懐かしさと未来への力強さ、その両方を同時に感じさせてくれる」と、大使は締めくくりました。
人と自然が共に生きる国、リトアニアの魅力

在本さんは、リトアニアの魅力について「人々の生き方そのもの」に強く惹かれたと語ります。無理をせず、しかし誠実に暮らす姿はとても印象的で、象徴的な場面として「地面に落ちた林檎を拾い上げて食べる」という光景を紹介しました。
自然と人が寄り添い、小さな循環の中にある豊かさ──そんな何気ない日常の一コマにこそ、リトアニアらしさが凝縮されているといいます。
また、元国家元首ランズベルギス氏との出会いのように、望んでいたことが不思議なほど自然な流れで実現していく経験も重なり、「出会いが導いてくれる国」としての魅力を改めて実感したと話しました。
写真集に込めた“平和への願い”

在本さんは、この写真集を通して自身がリトアニアで得た学びを多くの人に届けたいと語りました。
旅を重ねる中で強く感じたのは、リトアニアの人々にとって「平和や自由は当たり前のものではなく、自らの手で勝ち取るもの」だという感覚。
その確かな意志や決意は、彼女自身にとっても大きな気づきとなりました。
「写真という形でこの思いを残すことで、読んでくれる人にもその空気を感じ取ってもらえたら」──在本さんは静かな言葉の奥に、未来への願いを込めました。
リトアニア大使が語った「本がつなぐ力」、そして在本さんが紡いだ「人との出会いと学び」。
今回の刊行記念イベントは、まさにその二つを体現するひとときとなりました。
小さな国の日常に宿る美しさや、人々が自由と平和を大切に守り続ける姿は、写真を通して日本に生きる私たちにも新たな視点を与えてくれます。
この写真集は、一冊の本を手に取ることが未来へとつながる小さな扉であることを改めて感じさせてくれるでしょう。
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書籍情報

■定価:5,500円(本体 5,000円+税)
■ページ数:208 ページ
■判型:B5判 並製・ポスター判カバー装
■ISBN 978-4-87758-876-2 C0072
■出版社:アノニマ・スタジオ
■デザイン:藤田裕美
※巻末に著者によるエッセイ収録(日英バイリンガル)
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