第54回スウェーデン・アカデミー賞では、作品賞ほか最多6部門を受賞し、本年度のアカデミー賞スウェーデン代表作品に選出され、メイクアップ&ヘアスタイリング賞でオスカーノミネートを果たし、カンヌ映画祭では「ある視点部門」でグランプリを受賞した、スウェーデンの話題作『ボーダー 二つの世界』が、いよいよ本日10月11日(金)から公開。
一言では語れない重い内容でしたが、スクリーンから一瞬も目を離せない、緊張感のある出色の「ダークファンタジー作品」でした。
|ストーリー
税関職員のティーナは、違法な物を持ち込む人間を嗅ぎ分ける特殊能力を持っていた。ある日、彼女は勤務中に奇妙な旅行者ヴォーレと出会う。ヴォーレを見て本能的に何かを感じたティーナは、後日、彼を自宅に招き、離れを宿泊先として提供する。次第にヴォーレに惹かれていくティーナ。しかし、彼にはティーナの出生にも関わる大きな秘密があった―。
|予測がつかないストーリー展開
主人公が持つ特殊能力ゆえに、普通には進行していかないストーリー。ただ、ストーリーは丁寧に描かれるので、こちらが置いてきぼりになることはありません。ネタバレになるので、本編中の衝撃的なシーンは、残念ながら書けませんが、観終わった後に考えさせるものをこちらに与えてくれました。
|自分の中のボーダーとは
本作品のタイトル『ボーダー 二つの世界』にもある"ボーダー"。境界線という意味でもあります。主人公ティーナが、自分の容姿を悲観し愚痴をこぼし、それに対してヴォーレがティナーにかける言葉があります。
「それ(容姿が良いか悪いか)は誰が決めたんだ?」
ここにこの作品の本質が詰め込まれています。善悪、性別、美醜、貧富、国籍、宗教...。我々の生活は、様々なボーダーがあります。その大半は、今までの人生で人との関わりで自然と身についたもので、それを基準に、無意識のまま様々な選択をしているのです。この作品は"ファンタジー作品"ですが、今まで当たり前だと思っていたことに疑問を投げかけてきます。"君が持っているボーダーは正しいのか、ボーダーは必要なのか"。
|畏敬の念に狩られる森、そして自然の描写
もう1つ、この作品の見どころは、森、自然の描写。北欧の方々と話をしていると、僕たちが想像する以上に「森」を愛している人たちが多いのに気付きます。単純に森の恵みを採取するのが好きという人もいれば、森自体に畏敬の念を覚えるという方も多くいました。主人公ティーナからも、この自然に対する畏敬の念を感じましたが、それに寄与しているのは、作品のカメラワーク。
特にそれが顕著に分かるのが、ティーナが裸足で森を歩くシーン。柔らかい苔を踏みしめながら一歩一歩歩いていくティーナの足元にカメラがより、ふわっと沈んでいく苔を見て、思わず「この森を歩きたい!」と思ってしまったほどです。
正直、今まで見てきた映画作品とは比較できるものがないということと、扱うテーマゆえに心をかき乱されもしますが、確実に強く印象に残る作品です。
|ボーダー 二つの世界 予告編
|キャスト・スタッフ
監督:アリ・アッバシ
原作・脚本:ヨン・アイヴィデ・リンドクヴィスト『ぼくのエリ 200歳の少女』
2018年/スウェーデン・デンマーク/スウェーデン語/110分/シネスコ/DCP/カラー/5.1ch/原題:Gräns/英題:Border
字幕翻訳:加藤リツ子字幕監修:小林紗季
配給:キノフィルムズ R18+
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10月11日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷他ロードショー
©Meta_Spark&Kärnfilm_AB_2018
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