1991年に発行された『ソフィーの世界』は、難しいイメージがある哲学を少女ソフィーの目線で優しく描くことで世界的ベストセラーとなり、シリーズ合わせて全世界5,000万部発行の大ベストセラーとなりました。
30年の時を経て、ノルウェー出身の著者ヨースタイン・ゴルデルによる初の自伝的哲学エッセイ『未来のソフィーたちへ』(NHK出版刊)が発売となりました。
優しい語り口で紐解かれていく「生きること」の哲学。時間があるときにゆっくり読み進めたい作品です。
ヨースタイン・ゴルデルによる初の自伝的哲学エッセイ『未来のソフィーたちへ 「生きること」の哲学』
「わたしはなぜ生まれてきたのか?」「なんのために生きているのか?」「わたしはいつか...死ぬ」。だれしも一度はこんなことを考えたことがあるはず。しかも、人生のわりと早い時期に。それは哲学のはじめの一歩と言っていいかもしれません。
本書は、世界的ベストセラーとなった哲学小説『ソフィーの世界』の著者、ヨースタイン・ゴルデル初の自伝的エッセイ。
ノルウェーの豊かな自然のなかで育ったゴルデルは、子どものころ森のなかで「自分は自然の一部であると同時に、世界そのものでもある」ということに気づく衝撃的な体験をします。命の謎に目覚めた少年は、それ以来ずっと「存在すること」について考えつづけています。
そんな彼が人生を振り返り、自身の孫たちに宛てた手紙という形式で著したのが本書です。不覚にも『ソフィーの世界』に書き洩らしてしまった重要な哲学的課題についても、本書で初めて明らかにしています。
優しい語り口で語られる世界のこと人生のこと
今のわたしたちに必要なのは、何をおいても「生について」哲学することだと語る著者。
本著は6人の孫たちに宛てた手紙という形式で進むので、語り口がとても優しいのが特徴。そして、身近なテーマから哲学的要素を鮮やかに深く掘り下げるのがとても素晴らしい。
自然環境、思想、老い、愛、生と死...。幅広いテーマについて語られていきますが、この語り口と展開方法によって頭にすっと入ってくるのです。
装画を手がけたのはイラストレーターの福田利之!
表紙から裏表紙につながる装画を手がけたのは、イラストレーターの福田利之さん。
少女がのぞき込む世界には動物がいたり、トロルがいたり、森があったり、海があるなど、実にさまざまな世界が拡がっています。知ることで自分の世界が拡がっていく。
本著にぴったりの世界観が描かれています。
全編にわたり優しい語り口なので、読み始めるとどんどん読み進められてしまう作品ですが、読み終えたとき色々考えて、また読み返してしまうという不思議な魅力が本著にはあります。
時間が無いときに細切れに読むのではなく、時間があるときにゆっくり向き合いながら読み進めたい作品です。
中学生以上であれば無理なく読むことができるので、夏休みの読書感想文としてもおすすめ。
人生をどう生きるかのヒントを与えてくれる『未来のソフィーたちへ』。すべてをあたりまえに受け入れるおとなになってしまう前に、ゴルデルとともに思考の旅をしてみませんか?
著者情報
ヨースタイン・ゴルデル Jostein Gaarder
1952年ノルウェーのオスロ生まれ。ベルゲンの高等学校で哲学と思想史を教えながら作品を発表。のちに執筆活動に専念。世界的ベストセラーとなった哲学史小説『ソフィーの世界』(NHK出版 1995年)は、2024年現在67の言語に翻訳されている。本書は著者初のエッセイ。
未来のソフィーたちへ 「生きること」の哲学
■著者:ヨースタイン・ゴルデル
■訳:柴田さとみ
■出版社:NHK出版
■発売日:2024年7月10日
■定価:1,980円(税込)
■判型:四六判上製
■ページ数:208ページ
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