ホーコン皇太子・高円宮妃久子殿下が登壇 「北極海がつなぐ協力」シンポジウムをレポート

フィンランドやノルウェーなど北欧諸国にとって身近な存在である北極海。

その北極海をめぐる研究協力や環境課題について考えるシンポジウム「北極海がつなぐ協力(Collaboration Across the Arctic Ocean)」が、国連大学(東京都渋谷区)で開催されました。

会場にはノルウェーのホーコン皇太子殿下、高円宮妃久子殿下をはじめ、日本とノルウェーの研究機関関係者らが参加。

イベントでは、ノルウェー極地研究所と国立極地研究所による覚書(MOU)の締結も行われました。




「遠くへ行くなら一緒に」 北極研究を支える国際協力


なぜ今、日本とノルウェーが北極研究で協力するのでしょうか。

その背景には、北極で起きている変化が北極圏だけの問題ではなくなっていることがあります。

海氷の減少や気候変動は世界各地の海や気候にも影響を及ぼすため、一国だけではなく国境を越えた研究協力が求められています。

シンポジウムを主催した北極フロンティアーズのアヌ・フレデリクセン事務局長は、国際協力の重要性を語る中で、世界的によく知られる格言「早く行きたいなら一人で行け。遠くへ行きたいなら一緒に行け」を紹介しました。

つまり、北極海をめぐる課題は一国だけで向き合えるものではなく、研究機関や国々が連携しながら知見を積み重ねていく必要があるということ。

今回のシンポジウムや、ノルウェー極地研究所と国立極地研究所による覚書締結も、そうした国際協力をさらに深めるための取り組みの一つといえます。

「北極は私たちの故郷」 ホーコン皇太子殿下が語った日本との共通点


基調講演に登壇したノルウェーのホーコン皇太子殿下は、日本とノルウェーがともに海とともに発展してきた沿岸国家であり、豊かな自然環境への誇りと、それを守ろうとする価値観を共有していると説明しました。

また、日本とノルウェーはいずれも雪深い冬を持つ国であり、雪景色やウィンタースポーツ文化といった共通点にも言及。

「海は私たちの共通の生命線であり、共通の責任でもあります」と述べ、両国を結ぶ海洋研究や環境保全の意義を語りました。

さらに、「北極は私たちの故郷です」と語り、ノルウェーにとって北極圏が生活や社会と深く結びついた存在であることを紹介。

気候変動による海氷減少や海水温上昇などの影響が北極で急速に進んでいることに触れながら、「科学がなければ、私たちの暮らしが地球環境に与える影響を理解することはできません」と研究の重要性を訴えました。

「今や世界全体が私たちの生息地」 高円宮妃久子殿下が訴えた危機感


続いて登壇した高円宮妃久子殿下は、日本とノルウェーが細長い国土や複雑な海岸線、多くの島々を持つ漁業国家であり、海への深い敬意を共有していると述べました。

そのうえで、人類は道具や技術を発展させることで地球上のあらゆる場所で暮らせるようになった結果、「今や世界全体が私たちの生息地になった」と指摘。

人間活動は地球上の最も遠い場所にまで影響を及ぼしており、「人類は他の生命の生存を脅かす存在となり、今では自らの生存さえ脅かす存在となっています」と強い危機感を示しました。

また、北極海の海氷減少や先住民族コミュニティへの影響にも言及。

研究や観測によって得られた知見を行動へ移す重要性を訴え、「データは集まり、研究も行われています。残されている最も難しい課題は行動です」と参加者へ呼びかけました。

「今私たちが競争している相手は時間」北極研究の最前線


シンポジウム後半では、北極海に向けた研究協力をテーマに、北極フロンティアーズのアヌ・フレデリクセン事務局長をモデレーターに迎え、ノルウェー極地研究所のカミラ・ブレッケ所長と国立極地研究所の野木義史所長によるパネルディスカッションも行われました。

ブレッケ所長は、1926年に行われた飛行船による北極探検を紹介しながら、「100年前は未知の世界を探検していました。

しかし今、私たちが競争している相手は時間です」と発言。スバールバル諸島周辺で急速に進む温暖化や海氷減少、氷河後退などに触れ、「私たちが知る北極は大きく変わろうとしている」と語りました。

一方、野木所長は今回締結された覚書について、北極・南極研究や観測データの共有、研究基盤の活用などを通じて、両国の連携をさらに発展させるものだと説明。気候変動だけでなく、社会や経済、人間活動も含めた幅広い視点から北極を研究する必要性を強調しました。



今回のシンポジウムではこのほかにも、北極海研究の最前線や研究成果の社会への発信、将来の国際共同研究のあり方などについて活発な議論が交わされました。

かつて北極は探検家たちが未知を求めて挑んだ場所でした。

しかし今、その変化を理解し未来へつなげるための「研究の最前線」となっています。

日本とノルウェーの研究機関による新たな連携は、北極だけでなく、地球全体の未来を考える上でも大きな一歩となりそうです。




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