【今週末にいける北欧イベント】福田利之展|吉祥寺の森

糸井重里さんが率いる「ほぼ日」のコンテンツ、スピッツのジャケット、江國香織さんの小説における装丁画。それぞれが持つ世界観を汲みながら自身の作風をしっかりと残し、手に取る人々の印象に刻まれる、それが福田利之さんが描く作品の特徴。

|イラストレーター福田利之の集大成とも言える 中身が濃い展覧会

LifTe 福田利之店展 ポスター
大阪育ちの福田さんが吉祥寺に事務所を移して14年になるといいます。第2の故郷と言ってもいい吉祥寺で現在開催中なのが、こちらの「福田利之展|吉祥寺の森」。イラストレーター歴30周年を記念してのこの展覧会は福田さんの今まで手がけた装画や雑誌の挿絵、絵本、ポスターはもちろん、文房具、食器、コーヒーのラベルやお菓子のパッケージなどが一堂に集まったもの。

LifTe 福田利之店展 作品と原画

LifTe 福田利之店展 江國香織 やわらかなレタス

江國香織さん著「やわらかなレタス」単行本、文庫の各原画とラフスケッチ

LifTe 福田利之店展 スピッツ spitz さざなみCD 群青

左からスピッツ『ルキンフォー』『群青』『さざなみCD』ジャケット原画、ラフスケッチ

 

今回の展覧会で注目したいのは、福田さんが手がけた作品の原画やラフスケッチも多く見ることができるということ。自身でターニングポイントとなったという江國香織さんの「やわらかなレタス」の原画、ラフスケッチはもちろん、スピッツの『さざなみCD』『スピッツ30周年記念 ポータブルレコードプレーヤー』のラフスケッチ、そして福田さんが上京して初めて手がけた『夢見るミノタウルス』の原画もじっくり見ることができます。

福田さんが描く作品には、木、花、植物などの自然、そして熊、リスなどの動物も多く登場することと、作品全体が持つ柔らかい雰囲気で「北欧」がよく引き合いに出されますが、御本人にお話を聞くとそう言った意識はしてないそうです。

|フィンランドがもたらしたもの

LifTe 福田利之店展 cafe moi 北欧通り

吉祥寺の北欧通りにあるmoiさんは、北欧ファンが足繁く通うお店

 

北欧を意識していないと言っても、フィンランドで2回、自身の展覧会を行っています。その最初のきっかけとなったのは、吉祥寺の北欧通り(大正通り)にあるmoi(カフェ モイ)さんでした。「仕事柄、落ち着いて仕事ができる空間が必要で、moiさんはそういった意味でも素晴らしい場所です。コーヒーも、シナモンロールも絶品ですしね」。最初はお気に入りの仕事場としてmoiさんを利用していましたが、店主の岩間さんとコミュニケーションが生まれるようになった後、ひょんな事でフィンランドが一気に近づきます。

「福田さんが手がけられた冊子がヘルシンキのnapaというお店で飾られていたそうです」。岩間さんから言われた言葉にびっくりしながらも、北欧を意識して作品作りをしていないのに、なぜか自分の手がけたものがヘルシンキにあるという不思議な感覚に襲われ、自然に言葉が口から出ました「ヘルシンキで展覧会できませんか」。

その後napaのデザイナーがcafe moiで展覧会をする話が持ち上がり、その交換という意味合いで福田さんの展覧会がnapaで開催される運びとなる。まさにトントン拍子。napaでの展覧会を実施し、そこからまたフィンランドデザイナーとのつながりを持ち、彼らの仕事に対してのスタイルを学んだと言います。「彼らは仕事とプライベートのオン/オフをしっかり分けています。その切り替えがしっかりしていることが、デザインのインスピレーションに繋がっているような気がするんです」。

|インスピレーションの種

福田さんのインスピレーションの種は?と尋ねると、笑いながら「寝ること」ときっぱり。「しっかり寝て起きた時は、あまり寝ていない時と比べて明らかに頭の動きが違うんです。しっかり寝た時はフルスロットルで頭が動いている状態(笑)。多分、作品を作る時の手法やアイディアは僕の中に全部入っていて、その引き出し方が頭の働き方で変わってくると思うんです。状態が良ければ柔軟に素早く引き出しは開くし、よくなければ引き出しが重いみたいな(笑)」。

|十布という新しいデザインを表現する場

LifTe 福田利之店展 ヨキピーン

(右)十布とフィンランドのリネン会社「ヨキピーン・ペラヴァ」社と製作したタペストリー「森の住人」

 

そしてフィンランドで感じた「生活に寄り添うデザイン」は、福田さんが大阪時代で感じた想いとリンクをします。当時福田さんのデザインを布にして、それを多くのデザイナーが商品をそれぞれ作るというプロジェクトがありました。自身が手がけたデザインが他の人によってまったく違う商品として生まれ変わるのを目の当たりにし、いつかまたそれをやりたいと想い続けていた福田さんが、建築家の滝口聡司さんと「十布(テンプ)」を立ち上げたのは自然な流れだったのかもしれません。

十布は、福田さんがデザインしたものを様々なテキスタイル、布プロダクトを製作していく今注目されているブランドの一つで、昨年末から年始にかけて開催された「ほぼ日」のTOBICHI②で開催された「十布 つつむ展」は多くの来場客で完売の商品も多く出たそうです。

活躍の場を広げる福田さんにとって、長く時間を過ごす、つまり住む、そして働く場所も大事。そんな福田さんにとって、この吉祥寺という場所は最高な環境だそうです。「一歩足を伸ばせば緑豊かな井の頭公園があるし、地域としての暖かみもある、そして交通の便もいいですしね」。

|福田利之さんが見た吉祥寺の森、そして物事の多面性

LifTe 福田利之店展 吉祥寺の森Ⅰ、Ⅱ

(左)吉祥寺の森-Ⅱ (右)吉祥寺の森-Ⅰ

今回の展覧会に合わせて福田さんが描き起こしたのがこちらの二つの『吉祥寺の森』の連作。明るい色調で動物たちが楽器を演奏しているのが『吉祥寺の森-Ⅱ』、暗い色調で描かれているのが『吉祥寺の森-Ⅰ』。展覧会の会場を施設内に持つ商業施設「コピス吉祥寺」のために製作されたのが『吉祥寺の森-Ⅱ』で、商業施設が持つ明るさをイメージに、展覧会会場でもある「武蔵野市立吉祥寺美術館」のために製作された『吉祥寺の森-1』は、夜のイメージを心象風景としてそれぞれ製作されています。

LifTe 福田利之店展 フォト絵

2004年から始まったフォト絵の作品は1101枚。並ぶと圧巻。

学生の頃、旅好きでもあった福田さんは、旅とイラストレーションを組み合わせた「フォト絵」というコンテンツを生み出しました。あるものを撮影して、それにイラストを加え違うものに生まれ変わらせる(例えばサッカーボールが集まった写真にパンダを描き、パンダが集まっているような作品にする)。この「フォト絵」は「ほぼ日」のコンテンツにもなり、本も出版されている。この「フォト絵」を通じて物事を多面的に見るという癖がついたと言います。

LifTe 福田利之店展 吉祥寺の森Ⅰ ラフスケッチ

吉祥寺の森-Ⅰ ラフスケッチ

今回の夜のイメージをと描いた『吉祥寺の森-Ⅰ』は、見方を変えると別の側面が出てくるという福田さんの真骨頂とも言える作品で、例えば作品を逆さにしてみるとまた違ったものが見えてくるので、時間をかけてゆっくりと鑑賞したい作品です。

|関連グッズも注目!

LifTe 福田利之店展 福田雑貨店

その他にも会場入り口には、「福田雑貨店」と題して福田さんが関わってこられた商品やグッズを購入できる売り場も併設されています。先ほど紹介した十布の商品はもちろん、福田さんが「これ良いですよ」とオススメしていた自分の人生の終わりを意識するいわゆる遺書が作れる「いまからノート」(文:藤本智士 青幻舎)も販売されています。

|編集部で購入したのはこちら!

LifTe 福田利之店展 編集部で購入したもの

じっくり福田雑貨店を見て実際に購入したのがこちら!

08COFFEE リキッドコーヒー

2011年にオープンした秋田の「08COFFEE」さんのリキッドコーヒー。4面にそれぞれ秋田の四季を描いた福田さんのイラストは、飽きがこない。コーヒーもすっきりとしていて酸味も感じこれからの季節冷蔵庫にあると嬉しい一品。飲んだ後は棚に飾ってぼんやり眺めたい、そんな商品です。

絵本 『ミニカーミュート だいかつやく!』

男の子がちっとも遊んでくれなくなったミニカーのミュートが活躍する冒険譚。小さいながらも奮闘するミュートの姿勢も好きですが、やはり福田さんの原画のタッチをそのまま活かしているのと、随所に出てくる可愛い動物たちに心を奪われます。福田さんらしく細部まで描き込みがされているので、読み返すたびに新しい発見がある、そんな素敵な絵本。もちろん子供への読み聞かせだったり、子供が最初に自分で読む本としても最適かも。

絵本 『ふたり』

こちらは絵本と言ってもどちらかというと大人向けかもしれません。文章は平易ですが、内容は深い。生きることを肯定していく物語。ミニカーミュートとは打って変わって、福田さんが得意とする抽象画と具象画の間のような不思議な世界観にどっぷりと浸れる良書です。

ポストカード

やはり買ってしまったポストカード。今回は「08COFFEE」さんのタッチが素敵だったので、その似ているタッチのものと、緻密にイラストが描かれている2種、そしてちょっとゆったりとした空間も感じさせるデザインのもの、計4種。

|スタンプラリーも必見!

LifTe 福田利之店展 スタンプラリー

また、展覧会会期中にはスタンプラリーも実施中。会場の施設ともなっている「コピス吉祥寺」の館内に設置された5つのスタンプを全部集めて、展覧会会場の武蔵野市立吉祥寺美術館に行くと、福田さんの描きおろしのポストカードが貰えるそうです!
※ポストカードがなくなり次第終了、ポストカードはスタンプラリー参加者1名につき1枚まで

LifTe 福田利之店展 本人

イラストレーターとして30年、その半分の14年を過ごした吉祥寺という場所に対して「本当に来て良かったと思っています。様々な魅力を持った吉祥寺は、多くの方に知ってもらいたいと思ってますし、微力ですが吉祥寺の魅力を発信していきたいです」と最後まで謙虚な姿勢。

LifTe 福田利之店展 会場様子

今回の展覧会は計350点以上の作品、原画、ラフスケッチが展示されています。美術館の関係者に聞いた所、個人で所有されていた作品も多くあったとのことで、たくさんの方の協力があって今回の展覧会が実施できたそうです。これだけ幅広い方々とのお仕事をされてきたのは才能はもちろん、福田さんの人柄も多分に影響をしていると感じます。福田さんの穏やかで優しい人柄が垣間見れる本展覧会の会期は5月20日(日)まで。

※展覧会会場内でのスマートフォンを含めた写真撮影は禁止となっております

期間中は人形劇や、ライブ、トークショー等の企画も盛りだくさん!詳しくは下記をご確認ください。
福田利之展|吉祥寺の森 イベントスケジュールはこちら

【福田利之展|吉祥寺の森】
会期:2018年4月7日(土)~5月20日(日) ※4月25日(水)休館
開館時間:10:00~19:30
入場料:300円(中高生100円、小学生以下・65歳以上・障がい者の方は無料)
主催:武蔵野市立吉祥寺美術館
協賛:コピス吉祥寺
会場:武蔵野市立吉祥寺美術館
住所:〒180-0004
東京都武蔵野市吉祥寺本町1-8-16FFビル(コピス吉祥寺A館)7階

|記事内で登場した作品、お店、ブランドはこちら(記事登場順)

本「江國香織著:やわらかなレタス(文庫)
音楽「スピッツ さざなみCD
音楽「スピッツ ルキンフォー
音楽「スピッツ 群青
お店「moi(カフェ モイ)
お店「フィンランドのギャラリーnapa
※上記napaのサイトで福田さんのインタビューもご覧いただけます「インタビュー記事はこちら
ブランド「福田さんと建築家の滝口さんが手がける注目ブランド 十布
ブランド「フィンランドのリネン会社 ヨキピーン・ペラヴァ
サイト「過去のフォト絵も楽しめるサイト「福田のフォト絵」
本「1101枚のフォト絵から福田さんが厳選して本になった『福田のフォト絵』
本「福田利之 藤本智士 共著:いまからノート
商品「08COFFEE リキッドコーヒー
本「福田利之著:ミニカーミュート だいかつやく!
本「作 甲斐みのり 絵 福田利之:ふたり

|福田さんが語る北欧、そして北欧をモチーフにした新作

福田さんが語る北欧観、そして北欧をモチーフにして作られた新作。福田さんのインタビュー内容は、こちらの雑誌「LifTe」に収録されております。

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