本場フィンランドのサウナ・ドキュメンタリー映画『サウナのあるところ』

1年前、フィンランドを訪れた際に仲が良くなったフィンランド人男性からお勧めされた映画がありました。「サウナのドキュメンタリー映画なんだけど、とても良い出来なんだ。フィンランドらしくてね。こっちで1年以上異例のロングランで上映されたんだよ。でも日本で上映されるかまでは知らないんだけど」。

それから1年、日本では、サウナをテーマにしたTVドラマ『サ道』『サウナーマン〜汗か涙かわからない〜』が始まったり、サウナに関するイベントが開催されたりするなど、空前のサウナブームと言っても良い状態。そんな中で9月14日(土)から公開される、フィンランドのサウナドキュメンタリー映画があると情報を耳にしました。邦題は『サウナのあるところ』。そう、まさにフィンランドの友人がお勧めしてくれていた映画でした。
LifTe 北欧の暮らし サウナのあるところ フィンランド ポスター



|ストーリー

熱くなったサウナストーンに水がかけられ、ジュワッという音とともに、サウナにロウリュ(蒸気)が立ち上がる。ロウリュに包まれながら、フィンランドの男たちは語り始める。

継父からの虐待、犯罪歴のある昔の自分、離れ離れになった娘、止められなかった職場でのじこ、先に逝った妻や幼い娘・・・。これまで話すことができなかった人生の悩みや苦しみ。子供が生まれた喜び、かけがえのない"親友"との友情、置いてからの出逢い、祖父が薪に込めていた祖母への愛・・・。じんわりと伝わってくる大切な人への想い。

「話すべきじゃなかったかな」
「話していいさ」
ロウリュはやさしく男たちの心を溶かし、絆を深めていく。

|サウナという存在

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日本のサウナは、皆さんどんなイメージをお持ちでしょうか?もしかしたら多くの方が"静かに黙って入る"というイメージをお持ちかもしれません。サウナの国フィンランドで実際にいくつかサウナに入りましたが、現地の方々はサウナに入りながら結構喋ります。ローカルサウナにいくと、話しかけられることもしばしば。サウナストーンに水をかける回数を聞く人がいて、それに「3回かけていいよ!」なんて会話も行われたりします。コミュニケーションの場としても、サウナは良い場所なんだと感じることは1度や2度ではありませんでした。
LifTe 北欧の暮らし 映画 サウナのあるところ 外気浴 DIYサウナ
基本的にフィンランドの人々は、サウナに入って体を温め、外に出て外気浴をしたり冷水のシャワーを浴びて体を冷やす。その繰り返しをしながらサウナを楽しむので普通に2時間~3時間サウナで過ごします。そして連れとはだいたい隣に座り、室内はサウナストーンに水がかかる音、人々の会話のみ。自然と様々な会話が生まれていきます。

この作品も同様で、出てくる男性達がサウナに入りながら、様々な話をします。

|サウナという場が作り出す幸福感

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予告編や、ポスターを見るとこの作品は"ふんわり"とした印象を持っている雰囲気がありますが、サウナで繰り広げられる男性達の話は、重い話も多く登場します。自分がその場にいなかったことで助けることができなかった子供の話、親権問題で自分の娘に会えない話など。時には想いが込み上げて涙を流すシーンもあります。心情を吐露する男性の隣で、静かにその話を聞きながらサウナストーンに水をかける男性。

僕はこのシーンを観て、フィンランドが幸福な国と称される1つの鍵だと感じました。毎年国連が発表する「幸福度ランキング」。フィンランドは2年連続1位になっています。この調査は、各国の世論調査が元になっています。つまり簡単にいうと"自分が今幸せか"という問いに"幸せである"と答える人がフィンランドでは多いということです。

※詳しい世界幸福度ランキングに関しての記事はこちら

人間は弱い生き物です。ただ、支えてくれる人が入れば辛いことがあっても立ち直ることができる。今までの辛かったこと、今起きてる辛いこと。これを抱え込むこのではなく、友人に話すことによってその辛さを少しでも減らす。辛い状態から少しでも上に上がることができれば、それは小さいかもしれませんが幸せを感じることができるはずです。そしてまた前を向いて生きていく。これを媒介する場がサウナという場所なのだと感じました。

|映画のもう1つの見どころ

本作品のもう1つの見どころは、数多く登場するバラエティ豊かなプライベートサウナ。そこまでしてサウナに入りたいのか!と思ってしまうようなものまでが登場します。全てではないですが、ちょっとだけご紹介。
LifTe 北欧の暮らし 映画 サウナのあるところ 電話ボックスサウナ
こちらはメインビジュアルにも使用されている、使われなくなった電話ボックスをDIYしたサウナ。どうやって室内を暖めるのかは不明ですが、外に置かれたバケツは恐らく外に出た時に浴びる水が入っていると推測されます。
LifTe 北欧の暮らし 映画 サウナのあるところ DIYサウナ
上の写真はトラクターを改造して作ったサウナ。恐らくトラクターとしてもきちんと稼働するものなので、仕事をしながらサウナを満喫することができるのであれば、フィンランドの人にとっては幸せこの上ないでしょう。そして下の写真は、日本でも最近見かけるテントサウナ。
LifTe 北欧の暮らし 映画 サウナのあるところコティハルュ・サウナ
もちろんフィンランドを代表する、ヘルシンキにある老舗公共サウナ「コティハルュ・サウナ」も登場します。ここは、サウナに入った後の外気浴するための場所が公道なので、上半身裸の男性たちが外でのんびり座っている横を近隣で生活している人達が行き交うというフィンランドならではの光景を目にすることができます。

|原題「Miesten vuoro」が表す意味

この作品の原題は「Miesten vuoro」。フィンランド語では「男の番」という意味です。作品中登場するのは殆どが大人の男性で、子供が生まれたばかりの若い父親から、老人のグループまで様々。実に多くの男性達がサウナという場所を介して様々な話をします。まさにフィンランドの日常を上手く切り取った作品です。



|『サウナのあるところ』予告編

|キャスト・スタッフ

監督:ヨーナス・バリヘル、ミカ・ホタカイネン
後援:フィンランド大使館、公益社団法人 日本サウナ・スパ協会
提供・配給:アップリンク+ kinologue
2010年/フィンランド/フィンランド語/ドキュメンタリー/81分/原題:Miesten vuoro /英題:Steam of Life
オフィシャルサイト
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オフィシャルInstagram 
2019年9月14日(土)、アップリンク渋谷、アップリンク吉祥寺、新宿シネマカリテほか全国順次公開
©2010 Oktober Oy.




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