静かな感動を呼ぶ デンマーク映画『わたしの叔父さん』明日より公開!

LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA イェデ・スナゴー ペーダ・ハンセン・テューセン
デンマークの田舎を舞台に描かれた、静かな感動を呼ぶ映画『わたしの叔父さん』

2019年10月に開催された「第32回東京国際映画祭」で"東京グランプリ"&"東京都知事賞"のW受賞を皮切りに、各国の国際映画賞を受賞し続け、本年度の北欧映画No.1を決定する「ノルディック映画賞(※)」(Nordic Council Firm Prize)のデンマーク代表作品にも選出されています。

東京国際映画祭でも絶賛された本作品は、映画ファンの中で日本公開が待ち焦がれていた作品の1つ。いよいよ1月29日(金)から、YEBIS GARDEN CINEMA他、順次全国ロードショーとなります!

※2002年に開催され、2005年以降は毎年開催されている。過去にはLifTeでも取り上げた『過去のない男』(フィンランド/2002年)、『サウナのあるところ』(フィンランド/2010年)、『オリ・マキの人生で最も幸せな日』(フィンランド/2016年)、『サーミの血』(ノルウェー/2017年)、『たちあがる女』(アイスランド/2018年)、『罪と女王』(デンマーク/2019年)などが、ノミネート及び受賞をしている(カッコ内の年は各国での公開年)

スポンサーリンク



ストーリー

LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA イェデ・スナゴー ペーダ・ハンセン・テューセン
のどかで美しいデンマークの農村27歳のクリスは、叔父さんとともに伝統的なスタイルの酪農農家を営んでいる

朝早くに起きて、足の不自由な叔父さんの着替えを手伝い、朝ごはんを食べ、牛の世話をして、作物を刈り取る。晩ごはんの後はコーヒーを淹れてくつろぎ、週に一度スーパーマーケットに出かける。

ふたりの穏やかな日常は、ある夏の日を境に、少しずつ変化する。
LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA イェデ・スナゴー
クリスはかつて抱いていた獣医になる夢を思い出し、教会で知り合った青年からのデートの誘いに胸を躍らせる

戸惑いながらも広い世界に目を向け始めたクリスを、叔父さんは静かに後押しするのだが……。

『わたしの叔父さん』みどころ

通常の映画とは違う手法が成し得た2人の絆

LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA イェデ・スナゴー ペーダ・ハンセン・テューセン
この作品でまず目を引くのが、クリスと叔父の間合いや掛け合い。特に冒頭10分程度の、朝から夜までの2人の日常を観るだけで、2人が長年連れ添っているというのが充分に伝わります

朝ごはんの支度、作業、作業を終えて液体石鹸を用意するシーン、身体が不自由な叔父の着替えをさせてあげるシーン、この日々のルーティンに一切無駄がないというか、自然の流れを感じるのです。

一切無駄がない分、無機質にも感じるのですが、時折見せるクリスの叔父に対する眼差しからは深い母親のような愛情を感じます

クリス役と叔父役は実際の親戚

この2人の空気感が自然なのは、理由がありました。クリス役のイェデ・スナゴーと叔父役のペーダ・ハンセン・テューセンは、実際の姪、叔父の関係、つまり親戚なのです。

しかも叔父役のペーダ・ハンセン・テューセンは、演技経験がない全くの素人

監督は、撮影する場所を、クリス役を演じたイェデ・スナゴーの親戚の農場と決め、準備期間中に農場滞在をし、脚本を書き上げている際に、彼女の叔父が持つ雰囲気と、彼女の関係性を見て配役を決めたそうです

通常、映画は脚本→ロケハン→配役→撮影→編集という流れがあります(もちろん違うパターンも多々あり)が、本作品は、ロケハン→脚本→配役→撮影→編集という流れだったため、このキャスティングになりました。

そのため、2人の掛け合いのシーンは絶妙な仕上がりになっています。

美しい自然描写そして自然の音

LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA ペーダ・ハンセン・テューセン
本作品は、デンマークのユトランド半島の田舎で撮影されていて、田舎だからこそのハッとするほど美しい自然描写がいくつも登場します。

そして、作品中には音楽がほとんど流れません。それゆえに登場人物の表情や、視線、セリフに集中できるのはもちろん、風の音渡り鳥の鳴き声牛舎の中を歩く藁を踏みしめた音なども自然と耳に入ってくるので、2人の生活により深く入っていくことができます。

誰にでも訪れる人生の転機、選択

LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA イェデ・スナゴー
人生において、転機というのは誰にでも訪れるものです。振り返って初めて知る転機というものもありますが、自分でどちらかを選ぶという転機もあります。

本作品の主軸は後者で、クリスがどういった選択をするのかが最大の見所になっています。

丁寧に作られている作品だからこそ、ストーリーが進むにつれて、彼女の選択が気になってきますし、もし自分だったらと自然と彼女と自分を重ねてしまいます。

酪農王国デンマークの実情

LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA イェデ・スナゴー
本作品の見所の1つとして挙げたいのが、デンマーク国内の実情です。

デンマークは、世界でも有数な酪農王国として知られています。

本作品でも乳牛を飼育している農家、そして豚を飼育している小規模経営の酪農家の日常が描かれていますが、現在デンマークで段階的に"タイストール飼育(※)"を廃止を進める政策により、小規模経営の酪農家が廃業を余儀無くされている現状があります。

日本でも小規模農家の担い手問題は、ここ十数年耳にしますが、デンマークでも同じような状況があるというのを作品を通して理解ができます。

※牛舎内で1頭ずつ牛の首をロープやチェーンで固定・繋ぎ止める飼育方法。個体ごとの健康管理がしやすく、酪農家の目が届きやすい一方、飼料の給与や搾乳などの労力がかるため、飼育できる頭数は限られる。

監督の熱い想いが昇華した作品

LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA フラレ・ピーダセン監督
本作品でメガホンを取ったのはフラレ・ピーダセン。"Where Have All the Good Men Gone"(2016)で長編デビューをし、本作『わたしの叔父さん』が長編2作目となります。

彼は、この作品を撮った理由の1つとして、自分が生まれ育ったユトランド半島に残る"自然"そして、"昔ながらの農家の暮らし"が完全に消滅する前に残しておきたかったと挙げています。

先述しましたが、撮影に入る前には、実際に農場に寝泊りをし、酪農家の日常をつぶさに観察し、作業を手伝ったりしながら脚本を練り上げたそうです。

脚本が完成した後決定した配役も、できるだけ南部ユトランドの雰囲気を壊したくないということで、主に農場の半径15㎞内で暮らす、特徴的な南部ユトランドの方言を話す人々を起用

撮影は複数のカメラを使用することなく、1つの小型カメラのみ。クリスと叔父さんが過ごすキッチンのシーンでは、二人を覗いているような風景にしたいということで、ほとんど固定アングルで撮影が行われ、2人の空気感がしっかり表現されています。
LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA イェデ・スナゴー ペーダ・ハンセン・テューセン
全体的にシリアスな作品ながら、ところどころに雰囲気が柔らかくなる自然なユーモアもまぶされているのも本作品の特徴。

ストーリーの主軸は「若い女性が人生における転機をどのように選択するか」ですが、それをいかに自然に、説得力を持った形で表現するかが監督の腕の見せ所。

徹底的にリサーチをした上で丁寧に描くことによって、とても説得力がある素晴らしい作品に仕上がっています。

僕は、本作品で、彼女の選択を見届けると同時に、自分の過去の選択、そして自分が大切にしている(大切にしなくてはいけない)人の顔が自然と頭に浮かびました。

それは、多分クリスから叔父さんへの、そして叔父さんからクリスへの愛情がこちらの心に染み渡るように伝わったから。

淡々と描かれる日常、柔らかい光と印象的な風景、少しのユーモア、そして愛に溢れた映画『わたしの叔父さん』は、あなたの大切な人を思い出させてくれる素敵な作品です。

『わたしの叔父さん』予告編

キャスト・スタッフ

LifTe 北欧の暮らし デンマーク 映画 わたしの叔父さん ユトランド半島 YEBIS GARDEN CINEMA イェデ・スナゴー ペーダ・ハンセン・テューセン ポスター
監督/脚本/撮影/編集:フラレ・ピーダセン
出演:イェデ・スナゴー、ペーダ・ハンセン・テューセン、オーレ・キャスパセン、トゥーエ・フリスク・ピーダセン
プロデューサー:マーコ・ロランセン
音楽:フレミング・ベルグ
サウンドデザイン:フランク・ムルガード・クヌーセン
原題:Onkel/2019年/デンマーク/デンマーク語/カラー/DCP/シネスコ(1:2.35)/110分/字幕翻訳:吉川美奈子/デンマーク語監修:リセ・スコウ/後援:デンマーク王国大使館

配給・宣伝:マジックアワー
『わたしの叔父さん』オフィシャルサイトはこちら
『わたしの叔父さん』オフィシャルTwitterはこちら
© 2019 88miles
2021年1月29日(金) YEBISU GARDEN CINEMA ほか 全国順次ロードショー

北欧の今を知ることができるライフスタイルマガジンLifTe!

地元客にも長年愛される北欧各国の絶品レストラン

人気ブランドのテキスタイルデザイナーが明かす制作秘話!

そして観光定番から最新スポット情報も!

北欧の今を知ることができるライフスタイルマガジンLifTe「Vol.01」「Vol.02」は、絶賛発売中!
↓ ↓ ↓ ↓

北欧ライフスタイルマガジン「LifTe vol.02」

スポンサーリンク



関連記事

コメント

  • トラックバックは利用できません。

  • コメント (0)

  1. この記事へのコメントはありません。

Translate

sponsored

sponsored

ページ上部へ戻る