【6/15まで】スウェーデンの抽象画家ヒルマ・アフ・クリント、日本初の展覧会が東京で開催中!

現在、東京国立近代美術館で開催されている「ヒルマ・アフ・クリント展」は、抽象画の先駆者の一人とされるスウェーデン人女性画家、ヒルマ・アフ・クリントの日本初となる大規模展覧会です。

その希少性と芸術的価値から注目を集め、多くの来場者が詰めかけています。

会期は6月15日(日)までと残りわずかですが、本展覧会の見どころをご紹介します。



そもそも「抽象画」って?


いずれも「5人」《無題》 1908年 ヒルマ・アフ・クリント財団

抽象画とは、現実の風景や人物をそのまま描くのではなく、形や色、線などを使って感情や概念を表現するアート。

いわば「目に見えないものを、目に見える形にした絵」と言えます。

難しそうに感じるかもしれませんが、見方を変えると“自分の感覚で自由に感じていい”のが抽象画の面白さです。

その常識をくつがえす存在 ヒルマ・アフ・クリント


ヒルマ・アフ・クリント、ハムガータン(ストックホルム)のスタジオにて、1902年頃 ヒルマ・アフ・クリント財団 By courtesy of The Hilma af Klint Foundation

抽象画の先駆けといえば、カンディンスキーやモンドリアンが有名ですが、実はヒルマ・アフ・クリントはその数年も前に抽象画を描き始めていた女性画家。

しかも作品は、彼女の存命中および死後も長らく展示されることはなく、さらに死後20年は作品を公開しないよう希望していたと言い伝えられており、長らく限られた人々に知られるばかりでした。

彼女の作品が注目される理由は、

・世界初の抽象画家の一人であること

・女性でありながら、時代を超越するアートを生み出したこと

・宇宙や魂、生命といったスピリチュアルなテーマを“色と形”だけで表現したこと

にあります。

作品には明確なストーリーはありませんが、色や形を通して“感じること”を促してきます。

幾何学模様やシンボルが、観る人それぞれの感情や記憶と結びつき、個人的な体験へと導かれる——そんな自由で開かれた表現が、ヒルマ作品の大きな魅力のひとつです。

見逃せない展示〈10の最大物〉


〈10の最大物〉 1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団

本展は全5章構成で、ヒルマ・アフ・クリントの人生と芸術の変遷を、時代や思想の流れとともにたどることができます。

展覧会の最大の見どころは、彼女が45歳のときに描いた大型な10点組の作品〈10の最大物〉です。

これは、人の一生(幼年期、青年期、成人期、老年期)を10枚の巨大な絵画で表現したもの。

Childhood(幼年期):無垢な命のはじまりを、やさしい円や花のモチーフで表現。

Youth(青年期):色の衝突や渦巻きに、揺れ動く心と成長のエネルギーを感じる。

Adulthood(成人期):太い線や強い色づかいに、責任や選択の重みが宿る。

Old Age(老年期):淡く静かな色調で、人生の回帰と再生を描き出す。

〈10の最大物〉 1907年 ヒルマ・アフ・クリント財団

それぞれの作品には、花や渦巻き、幾何学模様といった象徴的なモチーフが織り込まれており、人生の段階における感情や変化が色や形として表現されています。

絵の前に立つことで、“人生とは何か”を自分自身に問いかけたくなるような、不思議な深さがあります。

ヒルマ・アフ・クリントの世界観を堪能できる数々の展示


《祭壇画、グループX、No. 1》 1915年 ヒルマ・アフ・クリント財団

〈10の最大物〉以外にも、スピリチュアルな図形や宇宙をテーマにしたシリーズ作品が多数展示されています。

幾何学模様や象徴的な色づかいが印象的な〈白鳥〉〈知恵の樹〉〈祭壇画〉なども見応えたっぷり。

図形で語られる“目に見えない世界”に、ふと心を持っていかれるような感覚になります。

また、ヒルマが霊的な存在からのメッセージとして描いたとされる作品群は、彼女の内面と宇宙とのつながりを垣間見るような、静かで力強い世界観を感じさせてくれます。

作品との「対話」が生まれる空間


《〈進化、WUS /七芒星シリーズ〉 1908年 ヒルマ・アフ・クリント財団

会場で印象的だったのは、多くの人が作品ひとつひとつをじっくり見つめていた姿。

決して派手な展示ではありませんが、静けさの中にある強いメッセージが、来場者ひとりひとりの心に届いていたのかもしれません。

ヒルマの世界とともに、スウェーデンの魅力も持ち帰る


会場のショップでは、今回の展覧会のために制作された公式図録をはじめ、トートバッグや関連書籍、ポストカードなど、魅力的なグッズが多数販売されています。

幾何学模様ややわらかな色づかいを取り入れたデザインは、まさにヒルマ・アフ・クリントの世界観そのもの。

さらに、スウェーデン大使館商務部「Try Swedish!」による特設棚も設置されており、リンゴンベリージャムやチョコレートなど、スウェーデンを代表するフードアイテムも販売中。

アートだけでなく、北欧の食文化にも触れられる、うれしい仕掛けです。


ヒルマ・アフ・クリントの作品は、北欧デザインや現代アートのルーツを探る上でも非常に貴重な存在。美術に詳しくなくても、直感で感じられるアートです。

会場の出口付近には、図録やアートカード、トートバッグなどを揃えたショップも。美しい色づかいやシンボリックなモチーフがデザインされたアイテムは、まさに“ヒルマの世界”を持ち帰れる特別なおみやげになります。

会期は6月15日(日)まで。週末は混雑が予想されるため、できるだけ早めの時間帯の訪問がおすすめ。

ぜひこの機会に、“人生を描いたアート”に出会いに行ってみてください。

👉「「ヒルマ・アフ・クリント展」オフィシャルサイトはこちら

「ヒルマ・アフ・クリント展」アクセス


■会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー
■会期:2025年3月4日(火)~6月15日(日)
■休館日:月曜日
■開館時間:10:00〜17:00(金・土曜は10:00〜20:00)※入館は閉館の30分前まで
■観覧料:一般 2,300円(2,100円)/大学生 1,200円(1,000円)/高校生 700円(500円)
( )内は20名以上の団体料金。いずれも消費税込み。
中学生以下、障害者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。
それぞれ入館の際、学生証等の年齢のわかるもの、障害者手帳等の提示が必要。
キャンパスメンバーズ加入校の学生・教職員は、学生証・職員証の提示により団体料金で鑑賞可能。
本展の観覧料で入館当日に限り、所蔵作品展「MOMATコレクション」(4-2F)、コレクションによる小企画「フェミニズムと映像表現」(2Fギャラリー4)も鑑賞可能。
■主催:東京国立近代美術館、日本経済新聞社、NHK
■協賛:大林組、DNP大日本印刷
■特別協力:ヒルマ・アフ・クリント財団
■後援:スウェーデン大使館
■住所:東京都千代田区北の丸公園3−1




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