フィンランドを代表する作家・画家であり、ムーミンの生みの親であるトーベ・ヤンソンが最初の小説『小さなトロールと大きな洪水(Småtrollen och den stora översvämningen)』を出版したのは1945年のことでした。
それから80年。今もなお世界中で愛され続けているムーミンたちの物語には、トーベ自身の人生やフィンランドの風景が色濃く刻まれています。
今回LifTe編集部では、トーベ・ヤンソンにゆかりのあるヘルシンキ市内のスポットを、実際に歩いてめぐってきました。
掲載している写真は、冬のヘルシンキを訪れた際に撮影したもの。少し静けさを帯びた風景からも、彼女が生きた空気や、物語の奥にある深い余韻を感じていただけるはずです。
「トーベ・ヤンソン公園(Tove Janssonin Puisto)」-MAP①

ヘルシンキ中心部、ウスペンスキー寺院のすぐ裏手にひっそりと広がるこの小さな公園は、2014年に彼女の生誕100周年を記念して命名されました。
トーベが幼少期を過ごしたカタヤノッカ地区に位置し、彼女自身もよく遊んだという思い出の場所です。

園内には、小さな子どもたちが遊べる遊具やベンチがあり、ムーミンのイラストが描かれた遊具もちらり。トーベの作品に通じる、穏やかでユーモラスな空気が流れています。
トーベ・ヤンソンの生家:カタヤノッカ地区 -MAP②

トーベが1914年に生まれ、青年期を過ごした家が今も残るこの場所は、アールヌーヴォー様式の美しいアパートメント。
彫刻家の父ヴィクトルと、イラストレーターでありグラフィックアーティストの母“ハム”ことシグネ・ハンマルステンに囲まれた家庭は、創作と芸術が生活に根づいた特別な空間でした。

建物の入口には、当時この地に住んでいたアーティストたちの名前が記されたプレートが掲げられています。
その中には、トーベの父ヴィクトル・ヤンソンと、母シグネ(“ハム”)の名前も確認でき、この場所が彼女にとって創作と家族の原点だったことを静かに物語っています。
トーベ・ヤンソンのアトリエ:デザイン地区 -MAP③

そして、デザインミュージアムがあるヘルシンキの“デザイン地区”に佇むこの建物は、トーベ・ヤンソンが長年アトリエとして使用し、晩年には住まいとしても過ごした場所です。
街中にありながら静けさを感じさせるこの一角で、彼女は絵を描き、物語を書き、静かに人生を紡いでいきました。

現在は一般公開されていませんが、建物の外壁にはトーベの肖像とともに記された記念プレートが掲げられています。
立ち止まってその姿を見つめると、創作に向き合うトーベの静かなまなざしが浮かんでくるよう。
建物のまわりを歩くだけでも、どこか創造の余韻と温もりを感じることができます。
まさに、ムーミンの世界が深く根づいた“最後のアトリエ”ともいえる場所です。
「ヒエタニエミ墓地(Hietaniemi Cemetery)」-MAP④

トーベ・ヤンソンは2001年、家族とともにこの静かな墓地に眠っています。
墓石には、父ヴィクトルが生前に手がけた彫刻作品が添えられ、ひまわりなど季節の花々が静かに手向けられています。
ここを訪れると、トーベが残した物語のやさしさと、フィンランドの自然と静けさに寄り添うような彼女の人生が、そっと伝わってくるようです。
ムーミンたちが見守っているかのような、心静まる場所です。
「エスプラナーディ公園(Esplanadin puisto)」-MAP⑤

ヘルシンキ中心部の散策で通りかかることも多い、エスプラナーディ公園。
ここにあるブロンズ製の噴水彫刻「水と子ども」は、トーベの父ヴィクトル・ヤンソンが1950年代に手がけた作品です。

水の中で無邪気に遊ぶ子どもたちを描いたこの彫刻。モデルは幼い頃のトーベだと言われており、父のまなざしの中で生きる彼女の面影が感じられます。
ヘルシンキのど真ん中で、トーベと家族の芸術がそっと交差する、見逃せないアートスポットです。
「ムーミンショップ・エスプラナーディ(Moomin Shop Esplanadi)」-MAP⑥

エスプラナーディ通りに来たのであれば、ちょっと足を伸ばして訪れたいのが「Moomin Shop Esplanadi」。
ここは、ムーミンオフィシャルショップの中でも“フラッグシップ”と呼ばれる特別な存在。
店内はまるでムーミンハウスのような内装で、あらゆる世代のムーミンファンをワクワクさせてくれます。

ここでは、定番グッズからコラボ商品、季節限定アイテムまで、常時500点以上のムーミングッズがそろいます。
2025年は生誕80周年記念イヤーということもあり、限定デザインのマグカップやアートプリント、フィンランド国内限定の記念商品なども登場し、ファン必見のラインナップに。
観光客だけでなく地元の人々にも親しまれており、“買い物を通じてムーミンの世界観に触れられる”特別なショップとして人気を集めています。
「ヘルシンキ美術館(HAM)」-MAP⑦

カンッピ地区にある「テニスパラッツィ」の中に位置するヘルシンキ美術館(HAM)は、トーベ・ヤンソンの芸術家としての一面に出会える場所。

©Tove Jansson Estate
館内には、トーベが手がけた巨大な壁画《Party in the City》《Party in the Countryside》が常設展示されており、彼女がムーミン以外にも多彩な才能を発揮していたことがわかります。
さらに2025年4月まで開催されていた特別展「Paradise」では、スケッチやチャコール画、公共空間のための制作物などが紹介され、芸術家・トーベの原点と挑戦が凝縮された内容となっていました。
👉ヘルシンキ美術館で、今年の4月6日まで開催していた “トーベ・ヤンソンの壁画と出会う展覧会『Paradise』” を紹介した記事はこちら
ムーミンの世界を形づくったトーベ・ヤンソンの足跡には、彼女が愛した風景や、静かなまなざしがそっと残されています。
ヘルシンキを訪れる際は、ぜひ彼女の物語をたどるように、これらの場所を歩いてみてはいかがですか?
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