スウェーデンを代表する陶芸家・デザイナー、リサ・ラーソンの創作の軌跡をたどる「リサ・ラーソン 追悼展 アーティスト・デザイナー・インスピレーションの源」が、東京・松屋銀座で開幕しました。
2024年3月、92歳でこの世を去ったリサ・ラーソン。
日本でも長年愛され続けてきた彼女の作品を、「アーティスト」「デザイナー」、そして周囲のクリエイターたちに影響を与えた「インスピレーションの源」という3つの視点から紐解く展覧会です。
会場には、リサの代名詞ともいえる猫やライオンなどの動物作品をはじめ、初期の陶芸作品、人物像、デザインワークなど、日本初公開となる貴重な作品を含む約250点が集結。
9月25日の開幕に先立って行われたオープニングイベントには、リサ・ラーソンの長女ヨハンナ・ラーソンさんをはじめ、駐日スウェーデン大使館のアダム・ベイ文化担当官、スウェーデン出身の俳優・庭師の村雨辰剛さんらが登壇。
リサ・ラーソンへの思いや、今回の展覧会の見どころを語りました。
「日本ほど彼女の作品を深く愛してきた国はない」
オープニングイベントの司会を務めたのは、スウェーデン出身の落語家・三遊亭好青年さん。
冒頭では、今回の展覧会が「アーティスト」「デザイナー」「インスピレーションの源」という3つの視点から、リサ・ラーソンの生涯にわたる創作活動をたどるものであることが紹介されました。

続いて登壇した駐日スウェーデン大使館のアダム・ベイ文化担当官は、リサ・ラーソンについて「スウェーデンを代表する陶芸家、デザイナーの一人」と紹介。
「日本ほど彼女の作品を深く愛し、その魅力を長年にわたって育み続けてきた国はないでしょう」と語り、日本でリサ・ラーソンが長く愛されてきたことへの感謝を伝えました。
さらに、リサの作品について「親しみやすさと深い人間味にあふれた作品は、国や世代を超えて、多くの人々を引きつけ続けています」とコメント。
リサ・ラーソンの作品が、単に“かわいい”だけではなく、人の心に長く残り続ける理由を感じさせる言葉でした。
娘・ヨハンナさんが語った、母リサ・ラーソン

続いて登壇したのは、リサ・ラーソンの長女、ヨハンナ・ラーソンさん。
娘だからこそ知る、ひとりの母親として、そしてひとりの芸術家としてのリサについて語りました。
「母は今も、その作品を通して生き続けています」
そう話したヨハンナさんは、リサについて「とても特別で、個性的で、そして何より、一緒にいると本当に楽しい人でした」と振り返ります。
芸術家として大きな志を持ちながらも、権威から評価されることにとらわれず、自らの感性とビジョンを大切にしていたというリサ。
ヨハンナさんは、母が大切にしていた言葉として、
「人々が、まだ自分自身でも欲しいと気づいていないようなものをデザインしたい」という創作への姿勢も明かしました。
さらに印象的だったのが、リサが晩年まで口にしていたという言葉です。
「年をとっている暇なんてないの。まだ実現したいアイデアが、こんなにたくさんあるのだから」
ひとつのスタイルや成功した手法にとどまることなく、新しいことに挑み続けたリサ・ラーソン。
ヨハンナさんは、「最後まで、いつか傑作を生み出したいと願っていた」と振り返りながら、「今振り返れば、母はすでに数多くの傑作を生み出していたのだと思います」と語りました。
村雨辰剛さん「リサ・ラーソンの世界観に没頭できる」

スウェーデン出身の俳優で庭師としても活動する村雨辰剛さんも登壇。
実は村雨さんがリサ・ラーソンを知ったのは、スウェーデンではなく、日本に移住してからだったといいます。
スウェーデンで牧場のような環境に囲まれ、身近に動物がいる中で育った村雨さん。リサが生み出す動物たちを見たとき、幼い頃の記憶とも重なり、すぐに親近感を覚えたそう。
自身も猫を飼っている村雨さんは、「マイキー」や「ミア」といった猫の作品について、「自分の家の猫を見ているような気持ちになる」と笑顔を見せます。
今回の展覧会については、「作品だけではなく、リサ・ラーソンさん本人にも少し近づけるような展示。ファンの方には本当にたまらないと思いますし、リサ・ラーソンさんの世界観に没頭できます」と、その魅力を語りました。
なぜリサ・ラーソンは日本でこれほど愛されるのか

三遊亭好青年さんとのトークセッションでは、「なぜリサ・ラーソンが日本でこれほど愛されているのか」という話題にも。
村雨さんは、リサの作品に見られる左右非対称の形や、焼き物ならではのむら、整いすぎていない表情などに注目。
そこには、日本の「侘び寂び」にも通じる“完全ではないものの美しさ”があるのではないかと語りました。
スウェーデンと日本。遠く離れた2つの国でありながら、自然との距離感や、美しさの感じ方にはどこか共通するものがある。
村雨さんは、リサ・ラーソンの作品について「2つの国の架け橋になっているのかもしれません」と話しました。
3つの視点からたどる、リサ・ラーソンの創作の軌跡

今回の展覧会では、リサ・ラーソンの創作を「アーティスト」「デザイナー」「インスピレーションの源」という3つの視点から紹介しています。
一点ものの作品を生み出すアーティストとしての顔、多くの人の暮らしに届くプロダクトを手がけたデザイナーとしての顔、そして周囲のクリエイターと刺激を与え合いながら新しい表現を生み出していった存在としての顔。
それぞれは独立したものではなく、互いに重なり合いながら、リサ・ラーソンならではの豊かな創作世界を形づくっていきました。
会場では初期の作品から晩年までをたどりながら、その変化や広がりを感じることができます。

展覧会の前半では、リサがまだ自身のスタイルを築いていく過程にあった初期の作品も展示されています。
器や馬をモチーフにした作品など、後に広く知られる猫やライオンとはまた異なる表現も並び、素材や形、装飾と向き合いながら試行錯誤を重ねていた姿が伝わってきます。
現在よく知られているリサ・ラーソンの作風が、どのように生まれていったのか。その原点をたどれるのも、今回の展覧会の大きな見どころです。
動物だけではない、人物作品やパブリックアートにも注目

動物だけではなく、人をモチーフにした作品も数多く手がけてきたリサ・ラーソン。
子どもを表現した小さな作品からは、丸みを帯びたフォルムや素朴な表情の中に、それぞれ異なる個性を感じることができます。
かわいらしさの奥に、その人物の性格や物語まで想像したくなるような表現も、リサ・ラーソン作品ならではの魅力です。

さらに会場では、リサ・ラーソンが手がけたパブリックアートにもスポットが当てられています。
写真は、1956年にスウェーデンのルンドビー学校のために制作された壁面作品「サーカス」。
人物や動物が生き生きと配置された大きな作品からは、私たちになじみ深い小さな陶器作品とは異なる、リサ・ラーソンのスケールの大きな表現を見ることができます。
建築空間と一体になった作品を手がけていたことを知ると、彼女の創作領域がいかに幅広かったのかも見えてきます。
おなじみの猫やライオンから見える、リサ・ラーソンらしさ

そしてもちろん、日本でも高い人気を誇る猫の作品も充実しています。
それぞれ表情も姿も異なる猫たちが並ぶ姿は、リサ・ラーソンファンなら思わず足を止めてしまうはず。
上部には、リサ本人と猫たちを写した写真も展示され、作品と作り手との距離をより近く感じることができます。
会場ではこのほかにも、日本のファンにはおなじみのライオンをはじめ、多彩な動物作品を展示。
初期の陶芸作品から人物、パブリックアート、そして親しまれてきた猫やライオンまで、会場を巡ることで、リサ・ラーソンがひとつのスタイルにとどまらず、常に新しい表現を模索し続けてきたことが見えてきます。
愛らしい動物作品だけではなく、その背景にある試行錯誤や、幅広い創作活動まで知ることで、これまでとは少し違った角度からリサ・ラーソンの魅力に触れられるはずです。
本展覧会は、長年リサ・ラーソンの作品を愛してきた人にとっては、改めてその奥深さを知る機会に。
そして、これまで猫やライオンなどの代表作しか知らなかった人にとっては、ひとりのアーティストとしてのリサ・ラーソンに出会える展覧会です。
娘のヨハンナさんが語ったように、最後まで新しいアイデアを追い続けたリサ・ラーソン。
その尽きることのなかった創造力を、約250点の作品を通して感じてみてはいかがでしょうか。
「リサ・ラーソン 追悼展 アーティスト・デザイナー・インスピレーションの源」は、東京・松屋銀座8階イベントスクエアで10月12日(月・祝)まで開催されています。
▶︎「リサ・ラーソン 追悼展 アーティスト・デザイナー・インスピレーションの源」オフィシャルサイトはこちら
リサ・ラーソン 追悼展 アーティスト・デザイナー・インスピレーションの源開催概要

◾️会期:2026年9月25日(金)〜10月12日(月・祝)
◾️会場:松屋銀座8階イベントスクエア
◾️開場時間:11:00〜20:00
※10月4日(日)、10月9日(金)は19:30閉場
※最終日は17:00閉場
※入場は閉場の30分前まで
◾️入場料:一般・大学生 2,000円/高校生 1,500円/中学生 1,200円/小学生 900円
◾️住所:東京都中央区銀座3-6-1
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