アルヴァ・アアルト。北欧デザインを語る上で外せない巨匠の一人。建築家、家具デザイナー、都市建設、アアルトの業績を紐解いていくと、一人の人間が手掛けたものとは信じられないほど、驚くほど多様性があります。
そんなアルヴァ・アアルトの多様性を目の当たりにできる展覧会が葉山にある「神奈川県立近代美術館 葉山」で開催中です。本格的なアルヴァ・アアルト回顧展は日本では、なんと約20年ぶりで、オリジナルの図面や家具、照明器具、ガラス器、建築模型など、実に約300点も展示がされているとのことで、実際に足を運んでみました。
|葉山に建つロケーション抜群の美術館
会場となっている神奈川県立近代美術館は、葉山の海沿いにあります。電車で向かう場合は最寄駅はJR「逗子」駅と京急「新逗子」駅。駅からバスでおよそ20分の道のりです。美術館は海に面しており、自然と共存しているような感覚に陥る素晴らしいロケーションです。
|自然や風景から生み出されという美しさ、見所は設計図
モダニズムが世界を席巻した1900年代前半、直線や平面にとらわれず、曲線を大胆に取り入れたアアルトの手法は、フィンランドモダニズムを確立させたと言われています。今回は彼の代表作でもあり、モダニズム建築が北欧で注目されるきっかけになったとも言われている、パイミオのサナトリウムの一室も再現されています。サナトリウムは、当時特効薬がなかった結核患者のために作られた療養所で、患者のために病室から自然が見えるようにと、まさに森の中に建てられたこの施設。常にアアルトの頭の中には、自然、そして彼が作り出すものを「人」が使うという当たり前の考えがあったそうです。
「形には中身が伴っていないければいけないし、中身は自然に繋がっていなければいけない」
これは彼の言葉。中身、つまり使い手のことが考えられていない物は意味がないし、その中身は自然と繋がっていることが大切だということ。
そんなアアルトは、サナトリウム以外にも多くの建築をしており、今回の展覧会では、その建築における設計図や、スケッチが見られるという点が本当に素晴らしかった。スケッチの段階で完成形が殆ど出来上がっている、彼の凄みを感じ取ることができます。
今回の展覧会は展示部分の撮影ができないため、この凄さは是非足を運んでその目で確かめて見てください。
|最後の楽しみ アアルト ルーム
展覧会最後の部屋に、アアルトの作品を存分に体験できる「アアルト ルーム」があります。ここでは、アアルトの作品がこれでもか!という程堪能できます。スツール60は、最近話題になった無印良品とのコラボバージョンや、ミナ ペルホネンの生地があしらわれたものもあり、ここまでスツールが並んでいるのは見た事がありません。そのほかにもアアルトのデスクや、子供用の小さい椅子もあったりしますが、特に贅沢だったのは、窓から葉山の海が見られる一角。アアルトの椅子にもたれかかりながら、静かに海を眺める時間はなんとも言えませんでした。
|自然に近い場所だから余韻が長い
展覧会を後にして、外に出ると海辺までの散歩道があります。冒頭でも紹介したように、この美術館は海の目の前に建っています。自然を愛したアアルトの作品を観た後に、自身でもその自然の豊かさを体験できるというのは、とても素晴らしいものです。自然と歩くスピードはゆっくりなるし、いつもは目に止めないような草木に目が行きます。僕が行った日はちょうど夕焼けが綺麗に見える日でした。アアルトの偉大さ、そして自然の大切さを感じられる素晴らしい展覧会です。
|アクセス
【アルヴァ・アアルト-もう一つの自然】
会期:2018年9月15日(土)〜11月25日(日)
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
開館時間:午前9時30分〜午後5時(入館は午後4時30分まで)
観覧料:一般1,200(1,100)円/20歳未満・学生1,050(950)円/65歳以上600円/高校生100円
※( )内は20名以上の団体料金
※中学生以下と障害者手帳等をお持ちの方(および介助者原則1名)は無料
住所:神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1
電話:046-875-2800
「神奈川県立近代美術館 葉山」オフィシャルサイト
|巡回展スケジュール
本展覧会は巡回展となっており、神奈川県立近代美術館のあとは、下記スケジュールで巡回予定となっております。
2018年12月8日(土)~2019年2月3日(日) 名古屋市美術館
2019年2月16日(土)~4月14日(日) 東京ステーションギャラリー
2019年4月27日(土)~6月23日(日) 青森県立美術館
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