北欧の音楽というと、ヘヴィメタル、デスメタル、スウェディッシュポップなどを想像される方が多いかもしれませんが、ジャズも北欧各国で愛されていて、北欧ジャズというジャンルも日本で注目を浴び始めています。
実際に、フィンランドに行ってみると、首都ヘルシンキでは、平日、休日に関わらず、レストランやバーなどで様々なジャズライブが開催されていて、その日どこで何のライブが開催されているかを検索できるwebサービスもあり、そして年々拡大するジャズのイベントが、ヘルシンキで開催されているのも分かりました。
今回は実際に訪れたジャズを聴けるスポット、そして現地で注目されているジャズのイベントをご紹介♪
北欧ジャズが確立するまで
そもそもジャズ発祥は皆さんもご存知の通りアメリカ。
19世紀末から20世紀初頭にかけてアメリカのニューオリンズを中心に広がっていき、現在のジャズというスタイルが確立されたのは1910年代のこと。
その後アメリカでは、モダンジャズ、クールジャズ、フュージョンなどジャズの中でも様々な流派が生まれ、ジャズの裾野は広がりを見せていきます。
北欧にジャズが浸透し始めるのにはもっと時間がかかりますが、1966年転機が訪れます。フィンランド西岸でジャズフェスティバル「ポリ・ジャズ」が開催されたのがこの年。
このフェスティバルは毎年開催され、今でもフィンランドで人気のあるフェスティバルの一つとして有名で、開催期間中40万人もの動員を誇ります。
この「ポリ・ジャズ」には、かのマイル・デイビスやマンハッタン・トランスファーも演奏をし、フィンランドを初めとした北欧にジャズが浸透していきます。
北欧ジャズというカテゴリが作られたのは1980年代以降で、ビル・エヴァンスや、マイル・デイビスを始めとするジャズピアニストの系譜とも言われています。
北欧ジャズと言われるものを聞くとピアノが印象的なフレーズが多いのもその由縁です。
料理はもちろんジャズを気軽に楽しめるレストラン「Juttutupa(ユットゥトゥパ)」-map①
2018年1月に訪れたのは、観光地としても有名な「ハカニエミ市場」近くにある、レストラン「Juttutupa(ユットゥトゥパ)」。
こちらのレストランは建物がから想像できるくらい古い歴史を持っていて、設立は何と1908年。この建物ができたその年にレストラン「Juttutupa」はオープンしています。
とても大きい店内で、料理の味も定評があり、多くの地元の方に愛されています。
そして何と言っても「Juttutupa」の魅力はライブ演奏。定期的にジャズ演奏が行われており、それを聴くために多くの音楽ファンがこの店を訪れるのです。
その日のタイムスケジュールを見ると、今回はトリビュート演奏。
21:00開始の予定でしたが、若干遅れてレストランに21:10着。ライブあるあるで、まだ始まっていない様子。
ドリンクを注文して席を探しましたが、椅子はもう満員で、通路までぎっしりの人。おそらく100人弱はいる模様。
21:20を回ったところでステージ開始。
ダブルサックス、ピアノ(キーボード)、ドラム、ダブルベースの5人編成。
演奏時間は1時間強くらい。僕は正直ジャズに詳しくはないので、演奏スタイルや何に対してのトリュビュートかまでは分からなかったのですが、会場が一体となるような雰囲気を味わうことができました。
演奏が始まると、それぞれが持っている飲み物や食べ物に手をつけなくなる。ただひたすらに目の前で繰り広げられる演奏に注意を傾ける。それもその会場にいる全員がその姿勢。まさに釘付け状態。
こちらは当日撮影した実際の演奏の様子。
雰囲気たっぷりのレストランバー「Tenho Restobar(テンホ レストバー)」-map②
2019年2月に向かったのは、ヘルシンキのカッリオ地区にあるレストラン「Tenho Restobar」。
ヘルシンキ最古の公衆サウナ「コティハルユサウナ」の近くにある雰囲気があるレストランで、ここでも定期的にライブ演奏が行われています。
この日のライブは「Solo Azul」というトリオバンドの演奏。
"Pauli Lyytinen(サックス)"、"Harri Kuusijärvi(アコーディオン)"、"Pauli Lyytinen(ダブルベース)"という構成で、アコーディオン奏者が入っているのが珍しいのですが、CDも出すフィンランドでも人気のトリオです。
特にサックスのPauli Lyytinenは、前述の2017年「ポリ・ジャズ」で賞も受賞している屈指の実力者。
前述した「Juttutupa」でもそうでしたが、演奏が始まると訪れた人々は、ほぼ喋ることなく演奏に集中して耳を傾けていました。
実際の演奏を聴くとわかるのですが、アコーディオンの音色が独特な雰囲気を作り上げ、個人的にはフィンランドを代表する映画監督"アキ・カウリスマキ"の作品を彷彿させる演奏。
どんなバンドに対しても、しっかり演奏を聴くという風土は本当に素晴らしい。周りの方々がしっかり聴こうという姿勢なのでこちらも自然と演奏に集中ができて、あっという間の1時間のライブでした。
フィンランドでは、このように多くのお店でジャズを体験できますが、これは何もレストランに限ったことではありません。
ここ数年ヘルシンキで開催されている、あるジャズのイベントも注目を浴びています。
「Tenho Restobar オフィシャルサイトはこちら」
音楽好き以外からも注目されるヘルシンキのイベント「We Jazz」
ヘルシンキでは地元の人々を巻き込んだイベントがここ数年盛んに行われています。
様々な場所のサウナを体験できる「サウナデイ」、1日だけ誰でもレストランオーナーになれる「レストランデイ」などは、メディアでも多く取り上げられ、ヘルシンキ以外の場所にも広がりを見せるものも増えてきています。
2013年から開催されている「We Jazz」も、音楽ファン以外の人々からも注目を浴びるジャズイベントとして現地のメディアに大きく取り上げられています。
「We Jazz」の特徴は、ギャラリーや図書館などの、ジャズを連想させないような場所で演奏を行う点。
なぜそのような場所で演奏を行うのかを「We Jazz」の主催者"Matti Nives(マッティ・二ヴェス)"さんに話を聞くと「どうせやるなら新しく、ジャズがこれまで演奏されなかった場所や、これまでジャズに馴染みが無い聴衆を取り込もうという方向性を模索したんだ。ジャズをみんなの音楽にしようとね」という答えが返ってきました。
つまり、より多くの人にジャズに触れてもらうために、アイデアを練った結果だったのです。
彼のアイデアは功を制し、年々規模を拡大し、ヘルシンキ中心地にあるアテネウム美術館や、ロンナ島というヘルシンキから船で渡れる島でも開催するようになりました。
※Matti Nivesさんのインタビューは後述する雑誌「LifTe 北欧の暮らし vol.02」で掲載しております
ジャズの垣根の低さ、接点の多さ
今回は、レストランで開催されたジャズのライブ演奏を2箇所、そしてヘルシンキでのジャズイベントをご紹介しましたが、感じたのは「垣根の低さと接点の多さ」。
どちらの会場でもそうですが、まず訪れる方々が真剣に音楽に耳を傾けるという素地があるというのが大事ですが、本当に様々な箇所で、ジャズを生演奏で聞けるレストランやバーがヘルシンキにはあります。
演奏するアーティストによって入場料を別途支払う場合もありますが、「Juttutupa」も「Tenho Restobar」も入場料はありませんでした。
ふらっと飲みに行く感覚で、しっかりしたジャズの演奏を聴けるということで、それが日常になっていきます。
そして、そういったレストランがあったり、「We Jazz」のようなイベントがあると、自然とジャズに触れる機会も増えます。
つまり、良い循環でジャズファンが増えていき、それに触発され演奏者のレベルも上がり、マーケットが拡がって行くのです。
これからのフィンランドジャズ、そして北欧ジャズが楽しみです。
訪れたスポットはここ!
今回ご紹介したお店は、下記のmap内で赤くナンバリングしてマーキングしています。訪れた際は是非ご参考になさってください。
※番号は、各ショップや施設をご紹介している、上記記事内見出しの数字とリンクしています(ex:map-①)
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