- 2023-2-6
- スウェーデン, ノルウェー, フィンランド
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ラップランド地方、いわゆるノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北部とロシアのコラ半島でトナカイを飼い、共に暮らし、独自の言語を持つ先住民族"サーミ"の人々。
サーミ族の歴史は古く、紐解くと1万年以上前からスカンジナビア半島に存在していたと言われ、現在欧州連合(EU)諸国で唯一存在する先住民でもあります。
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毎年2月6日はサーミの日
1917年2月6日から9日まで、サーミ人初となる議会がノルウェーのトロンハイムで開催されたことから、2月6日は"サーミのナショナルデー"となり、毎年2月6日には、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーではサーミの国旗が掲げられます。
ただ1917年以降、北欧各国の近代化に伴い、日本に置ける先住民アイヌ族同様、サーミ族も差別や偏見を受ける時代もありました。
その後1980年代以降、各国がサーミ族の文化を残すために法制度を整え、現在ではさらにその後の世代にサーミ文化を継承しようという試みも活発に行われています。
色々ある!サーミ族の歴史や、暮らし、文化などを知ることができる作品!
長い歴史をもつサーミ族が、どんな歴史があったのか、どんな暮らしをし、どんな文化があるのかを知ることができる作品をいくつかご紹介します。
【映画】 サーミ族に対する差別を正面から描いた『サーミの血』
2016年に公開された映画『サーミの血』の舞台は、1930年代スウェーデン北部のラップランド。サーミ語を禁じられた寄宿学校に通う、サーミ族の少女エレ・マリャの物語。
本作品は、東京映画祭、ヴェネチア映画祭など各国の映画祭で絶賛され、スウェーデン版アカデミー賞と言われる「ゴールデン・ビートル賞」で、「脚本賞」「編集賞」「観客賞」「主演女優賞」を受賞しました。
彼女が恋に落ちる青年がサーミではないスウェーデン人ということで、彼女がどのような選択をするのかという心がヒリヒリする作品。
サーミ族への偏見、そして差別がどのように行われていたのかも本作品を通じてよく分かります。決して軽い映画ではありませんが、観る価値がある作品です。
【絵本】 サーミ族の暮らし、文化が丁寧に描かれた「巨人の花よめ」
サーミ族は、トナカイと共に暮らし、伝統衣装を着ることでも知られています。
この絵本は、主人公のサーミ族チャルミを通して、サーミ族にとって大事なトナカイはもちろん、幸せを運んでくると言われるククサ(白樺のこぶから作られるカップ)、テント、そして民族衣装などの彼らの暮らしを知ることができます。
絵も可愛らしく読みやすいので、お子様と一緒に読んでみるのもオススメです。
【音楽】 サーミ族の伝統"ヨイク"を現代的にアレンジ ノルウェージャズユニット「ARVVAS」
サーミ族は、自然を大切にしこよなく愛し、そして自然とともに生きています。彼らは自然には霊が存在すると考えていて、自然界の声を聞くために"ヨイク"と呼ばれ歌唱を代々伝承しています。
ヨイクは、基本的に無伴奏で行われてきましたが、現代では打楽器などの伴奏が付くこともあります。
映画『アナと雪の女王』のオープニングでも、このヨイクをベースにした曲が使用され、ヨイク独特の歌唱が注目を浴びました。
ヨイクを現代風にアレンジし、ジャズと融合させたのがこちらのノルウェーのバンド「ARVVAS」です。
ヨイクを歌う女性シンガーの"Sara Marielle Gaup"と、ダブルベース兼ヴォーカル"Steinar Raknes"のユニット。
男性の太いヴォーカルと、喉を震わせているような不思議な感覚になるヨイクが重なり、心地よいアンサンブルが生まれます。
言葉を後世に残すためヒット映画をサーミ語の吹き替えで製作する試みも!
サーミ族自身が後世に自分たちの文化を伝えて行こうという試みで近年行われているのは、ヒット映画にサーミ語の吹き替えを版を製作するというもの。
これは、ノルウェーにある「International Sami Film Institute(国際サーミ映画研究所)」が主体となって行なっています。
過去には、ディズニー映画の『穴と雪の女王』なども製作され、2020年1月には、日本を代表するジブリの『千と千尋の神隠し』が、北サーミ語の吹き替え版が制作され、2020年1月16日のトロムソ国際映画祭で上映されました。
サーミの文化を後世に残していくための試みは様々な形で行われていますが、このような映画を含めた分かりやすい文芸作品に落とし込むのはとても分かりやすい試みです。
※国際サーミ映画研究所のディレクターにインタビューした記事はこちら
長い歴史の中で、差別や偏見に晒されたサーミ族ですが、現在各国の法制度整備、そして文化をしっかり後世に残そうという試み、そして"ククサ"などの手作りで作られる伝統的な民芸品も世界から注目を浴びるようになりました。
この後世に文化を伝えて行こうという姿勢は、これからも変わることなく、より多くの方にサーミ族という存在が少しずつ知れ渡るはずです。
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