13世紀のアイスランドで花開いた雄大で華麗な物語を選定し、1979年に日本で発刊された幻の名著『アイスランド・サガ』。
9〜10世紀のヴァイキング時代の様子や、当時の暮らし、風習なども分かるということで、古代の北欧に関心がある方から伝説的な書籍として知られていました。
ヴァイキングの少年トルフィンの成長を描いた傑作漫画『ヴィンランド・サガ』の著者、幸村誠さんも作品作りにおいて大いに参考にしたと公言する作品ですが、長い間入手困難な書籍でもありました。
この伝説的な書籍『アイスランド・サガ』が、新たな要素を加えて45年の時を経てついに新刊として復刊!
注目の内容をご紹介♪
「サガ」とは
サガは古アイスランド語のsegja(「言う」を意味する動詞)から派生した言葉で、語り、語られた出来事、物語の意。
ヴァイキング時代の9〜10世紀に人々がノルウェーからアイスランドへ入植した経緯、活躍した英雄、血族同士の復讐の応酬、異教時代の魔法や呪いなどを現した壮大な史伝的散文作品が現代に200篇ほど伝わっています。
本書は北欧文学研究者の谷口幸男氏が、その中から圧巻とされる6篇を選んで古アイスランド語から直接に翻訳し『アイスランド サガ』として1979年に刊行された旧版をもとに、あらたに編集を加え復刊された物です。
新刊『アイスランド・サガ』に収録されるサガと新たに加えられるもの
本書に収録されるサガは下記の6編。
エギルのサガ:巨漢のエギルが、ヴァイキング気質と比類ない詩才をもって王や難敵と渡り合う激動の生涯。
グレティルのサガ:人を殺め追放されたグレティルの、十九年間にわたる数々の武勇伝。
ラックサー谷の人びとのサガ:美貌で誇り高く、情熱を内に秘めた女性グズルーンの悲劇的な物語。
エイルの人びとのサガ:首長スノッリの政治や宗教的祭式、民衆の生活や習俗。
ヴォルスンガサガ:ワグナーの楽劇やトールキンの『指輪物語』の題材となった異色譚。
ニャールのサガ:最も長いサガ。海の勇士グンナルの一生と、ニャール一族の死とその復讐。
また、監修者による訳文の点検や文字拡大を施し、新たに図版・系図・地図・文献案内が加えられているので、1979年発刊の書籍を持っている方も注目の内容です。
訳者・監修者の言葉
サガ作品は、異教時代からキリスト教改宗期にまたがる、いわゆるヴァイキング時代と呼ばれる激動の時期を生きた北欧の農民層を活写しているという意味において、世界文学史上の偉観ということができる。(訳者・谷口幸男)
訳者:谷口幸男(たにぐち・ゆきお)
1929年、東京生まれ。東京大学文学部独文科卒業。広島大学名誉教授。ドイツ語学・文学、北欧文学、ゲルマン文化史専攻。アイスランドを中心とする中世期の北欧文学を体系的に翻訳・紹介するとともに、日本アイスランド研究会(現・日本アイスランド学会)初代会長を務めるなど、日本における古北欧文学研究を牽引。『エッダ―古代北欧歌謡集』(新潮社)で日本翻訳文化賞を、本書初版『アイスランド サガ』(新潮社)で藤村記念歴程賞を受賞。1990年、アイスランド政府より鷹勲章を、2012年には瑞宝中綬章を受章。2021年没。
サガを読むと、ふだん何気なくゲームのなかで接している名前がじつは七百年以上前のアイスランドで書かれた文献にルーツをもつことがわかる。(監修者・松本涼)
監修者:松本涼(まつもと・さやか)
1982年、静岡県生まれ。京都大学文学研究科修了。福井県立大学学術教養センター准教授。中世アイスランド史専攻。中世アイスランド社会を対象に、権力行使の在り方や人々の生活について研究。共著に『アイスランド・グリーンランド・北極を知るための65章』(小澤実・中丸禎子・高橋美野梨編著/明石書店)など。
推薦コメント
幸村誠
漫画『ヴィンランド・サガ』を描く上で、本書が最大の参考資料、一番の元ネタです!
書籍概要
タイトル:【新版】アイスランド サガ
訳者、監修者名:谷口幸男/訳 松本涼/監修
発売日:2024年6月17日(水)
仕様:A5判ハードカバー、函入り
本体定価:19,800円(税込)
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