2024年冬の北欧取材10日目・前編。
取材もいよいよ終盤に差し掛かったこの日。雪の舞うタンペレの街を歩きながら、まだ見ぬ表情を探して市内をめぐります。
氷の針のような細かな雪、美しく描かれた壁画アート、名物ムスタマッカラの味わい。
歴史ある教会の静けさや、季節のスイーツが並ぶマーケットホールのにぎわいも、どこかやさしく心に残ります。
そして前編の最後には、川沿いに建つモダンなサウナ「クーマ」へ。
タンペレらしさがぎゅっと詰まった空間で、ゆったりととのいの時間を過ごしました。
心に残る、細く繊細な雪の朝
ホテルを出ると、これまで見たことのないような細長い雪が舞っていました。まるで氷の針のような雪が、枝や服にふわりと積もっていく光景は幻想的で、静かな街に溶け込むようでした。
後で調べてみると、これは「針状結晶」と呼ばれる雪の一種で、気温や湿度の条件によってできるそう。北国の冬ならではの自然の造形美に、思わず見惚れてしまいました。
タンペレの住宅街に広がるストリートアート
雪の舞う中を歩いていると、住宅街に突如として現れたのが、大きな壁画アート。
フィンランド第2の都市であるタンペレでは、アートを通じた街づくりが進んでいて、**市が合法的に認めた「ストリートアートプロジェクト」**がいくつも存在します。
建物の壁一面を使ったアート作品は、地元アーティストの感性が光るだけでなく、地域住民の誇りにもなっているのだそう。
無機質になりがちな住宅街の中に、こんな色彩と物語があるなんて——まさに「街を歩く美術館」でした。
タンペレ名物ムスタマッカラを味わうならここ!「Tapola Tammelantori(タポラ・タンメラントリ)」 -MAP①
さらに歩いて駅近くまで来ると、そろそろ小腹が空いてきた時間帯。せっかくならタンペレ名物を…ということで向かったのが、「ムスタマッカラ(黒いソーセージ)」の有名店「タポラ」。
駅近くの広場にある「タポラ」のスタンドでは、週末になると朝8時から地元の人たちが列をなすほどの人気ぶり。
どっしりとした白いトレーラーハウスに赤と黒のロゴが目印で、「Aito(フィンランド語で本物という意味)」の文字がその自信を物語っています。
ここでは焼きたてのムスタマッカラをその場で注文でき、リンゴンベリージャムを添えて食べるのが王道スタイル。
外は寒くても、あつあつのソーセージと素朴な接客に心まであたたまります。
注文すると、出てきたのは真っ黒なソーセージに、鮮やかな赤いリンゴンベリージャム。そして、なぜかフォークが2本とナイフが1本、真っ直ぐ突き刺さってる⁉︎
この豪快な提供スタイル、実は地元ではごくごく普通。持ち上げて、ガブリと豪快にいくのがタンペレ流なんだとか。
さらに、ムスタマッカラに欠かせないのが冷たい牛乳。一見ミスマッチですが、この濃厚な味とさっぱりした後味の牛乳の組み合わせがクセになりました。
建築美に驚かされる「Kalevan kirkko(カレヴァ教会)」-MAP②
お腹を満たしたあとは、散歩がてら少し郊外の住宅エリアへ。
そこで出会ったのが、この日の中でもひときわ印象に残った場所——実は巨大な教会なんです。
この「カレヴァ教会(Kalevan kirkko)」は、フィンランドのモダニズム建築を象徴する存在で、1966年に完成。
建築を手がけたのは、フィンランド建築界の伝説的カップル、ライリ&レイマ・ピエティラ夫妻(Raili ja Reima Pietilä)。
彼らは、タンペレ市立図書館「Metso(メッツォ)」の設計でも知られ、自然や詩、フィンランド語のリズムから着想を得た有機的で詩的な建築を数多く手がけました。
このカレヴァ教会もまた、立ち上る祈りのような形や開かれた本のような外観など、見る人によって印象が変わる不思議なフォルム。
教会というよりアート作品のようなたたずまいです。
中に入ると、外観とはまた違った世界が広がっています。
天井まで伸びる高い柱が並ぶ空間は、どこまでも垂直に広がっていて、まるで森の中にいるような感覚に。
壁にはステンドグラスはなく、やわらかい自然光がそっと差し込むだけ。その静けさが、かえって心を深く落ち着かせてくれます。
左右に広がる木製のベンチと、壁面に組み込まれたユニークなデザインのパイプオルガンも印象的で、モダンでありながらあたたかみも感じられる空間でした。
地元客や観光客に愛されるマーケットホールのカフェ「Café de Halle(カフェ・デ・ハッレ)」-MAP③
街の中心部まで戻り、少しひと休み。向かったのはタンペレのマーケットホール内にある「Café de Halle(カフェ・デ・ハッレ)」。
クラシックで落ち着いた佇まいのこのカフェは、地元の人たちの“いつもの場所”でもあり、観光客にも人気のスポット。
特にフィンランドの伝統菓子や季節のスイーツの品ぞろえが豊富で、訪れるたびに目移りしてしまいます。
注文したのはラスキアイスプッラ。
ふかふかのパンは香ばしく、ほんのりスパイスが香るやさしい味わい。
そこにたっぷり絞られたホイップクリームがふんわりと口の中で広がり、見た目以上に軽やかな食べ心地。
甘さはしっかりあるけれど、しつこさは感じない大満足の一品でした。
川沿いのモダン空間でととのうサウナ「Saunaravintola Kuuma(サウナラビントラ・クーマ)」-MAP④
午後は、市内中心部のタンメルコスキ川沿いのエリアへ。向かったのは、ラウコントリ広場のすぐそばに建つモダンな建物「クーマ(Kuuma)」です。
2018年にオープンしたこの施設は、モダンなデザインと伝統的なサウナ文化が融合した、新しいスタイルのサウナ空間。
建物の中には、薪で温めるフィンランド式のサウナと、スモークの香りが広がるスモークサウナの2種類が用意されています。
どちらも木のぬくもりに包まれた落ち着いた空間で、サウナ室の中からは外の景色を眺めることもできるようになっていて、じんわりと体を温めながら、タンペレの象徴としても親しまれるタンメルコスキ川の風景を静かに楽しむことができます。
サウナでしっかり温まったあとは、外へ出て川の水で体を冷やすこともできます。
建物のすぐ裏手には、川の一角を囲った冷水エリアがあり、キンと冷たい水にそのまま入ることができるようになっています。
水に入るのが難しくても、外気浴スペースがしっかり用意されているのがクーマの魅力。
デッキにはテーブルとイスが並び、さらにブランコまで用意されています。
川を眺めながら、体も心もゆっくりととのえていく——そんなひとときが待っています。
サウナで温まり終えたら、そのまま川を見渡すガラス張りのレストランエリアへ。
天井高く開放的な店内には、木のぬくもりとタンメルコスキ川の景色が溶け合い、食事も景観もゆったり楽しめる空間です。
ちなみに、ヘルシンキの人気海辺サウナ「Löyly」と同じ NoHo Partners が運営しているので、北欧らしいサウナとグルメ空間の質の高さは折り紙つき。
旅の途中でほっとひと息つける、とっておきのリラックス空間でした。
👉【2024 北欧旅日記 10日目】タンペレ→ヘルシンキ<後編>へ続く
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