ヘルシンキの暮らしを感じる!映画『ラスト・ディール』絶賛公開中!

LifTe 北欧の暮らし フィンランド映画 ラスト・ディール クラウス・ハロ 国立公文図書館

Photo by Cata Portin

『ヤコブへの手紙』『こころに剣士を』で各国の映画祭で多くの賞を受賞し賞賛を浴びた、フィンランドのクラウス・ハロ監督による待望の新作『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』が絶賛公開中。ヘルシンキの美しい街並みも多く映し出された注目の作品ですよ!



|ストーリー

LifTe 北欧の暮らし フィンランド映画 ラスト・ディール クラウス・ハロ ヘルシンキ中央駅

Photo by Cata Portin

年老いた美術商オラヴィは、なによりも仕事を優先して生きてきた。長年音信不通だった娘に頼まれ問題児の孫息子オットーを、職業体験のため数日間預かることに。
そんな中、オークションハウスである一枚の肖像画に目を奪われ、その作品が価値のあるものだと確信する。しかし、絵には署名がなく、作者不明のまま数日後のオークションに出品されるという。オットーとともに作者を探し始めたオラヴィは、その画風から近代ロシア美術の巨匠イリヤ・レーピンの作品といえる証拠を掴む。
画家の命である署名がないことだけが気がかりだったが、オークションへ向け資金繰りに奔走するオラヴィ。そんな折、娘親子が自分の知らないところで大きな苦労をしていたことを知るが…。生涯を美術品に捧げた男がたどり着いた、真に値打ちのある人生とは。

|サスペンス要素、そして人間ドラマ

本作品の見どころは、サスペンスの要素と人間ドラマ要素の2軸を楽しめるということ。老画商の主人公オラヴィが、自分が見初めた絵画が本当に名作なのか、そしてその作品を自身が落札し、それを売り切ることができるのか。最初は反目し合う孫のオットーと協力しながら絵画の著作者を探し求めていく様は、良質な推理小説を読んでいるかのようなドキドキ感を得られます。この絵画に関する一連のやりとりの後は、サスペンスの要素から一転人間ドラマの様相を呈してストーリは続いていきます。観ていて身につまされるようなシーンも出てきますが、彼の意思が紡がれていくシーンは静かな感動を与えてくれます。

|オラヴィとともに歳を重ねたヘルシンキの街にも注目!

『ラスト・ディール』は、ストーリー以外の見所もたくさんあります。まずご紹介したいのがヘルシンキの街並みや、観光名所がロケ地として使われているところ。ヘルシンキに行ったことがある方であれば「おっ」!となること間違いなしのセレクトです。

アテネウム美術館や地元ギャラリーの全面協力

LifTe 北欧の暮らし フィンランド映画 ラスト・ディール クラウス・ハロ アテネウム美術館

Photo by Cata Portin

アテネウム美術館は、フィンランドの国立美術館で“芸術の拠点”とされ、所蔵されている作品はすべて国宝級の貴重な作品ばかり。多くの機材や人員を要する映画撮影で、まさかということがあってはいけません。そのために、撮影時にどのような機材を使い、どの角度から撮り、照明はどの程度の強さと熱さで、どんな備品をどのように使用するかなど、気が遠くなるほどの準備を行い撮影に臨んだそうです。その甲斐があり、アテネウム美術館のシーンは、迫力も感じるほどの出来栄え。

フィンランド最古のカフェ「エクベリ」も物語の中で重要な場所!

LifTe 北欧の暮らし フィンランド映画 ラスト・ディール クラウス・ハロ エクベリ

Photo by Cata Portin

アテネウム美術館の描写も素晴らしいですが、やはり取り上げたいのは、このフィンランド最古のカフェと言われる名店「エクベリ」。オラヴィが毎日通うほど彼の日常になっているエクベリは、物語の中で度々登場します。

LifTe 北欧の暮らし フィンランド映画 ラスト・ディール クラウス・ハロ エクベリ ブリオッシュ

エクベリは、アットホームな雰囲気があり、どんな人でも優しく迎えてくれる印象を持ちます。実際にエクベリに足を運んだ時も、観光客のみならず、地元の人々がゆっくりと寛いでいる雰囲気がありました。ちなみに作品の中でオラヴィがいつも食べるブリオッシュは、右下写真の左側にあるデニッシュ。エクベリはシナモンロールで有名ですが、このブリオッシュをはじめとして菓子パンや、惣菜パンも評判が高いのです。

※エクベリに実際行ったレポートはこちら

ヘルシンキの暮らしを感じる

LifTe 北欧の暮らし フィンランド映画 ラスト・ディール クラウス・ハロ トラム ヘルシンキ
エクベリ以外にもヘルシンキを感じるシーンは様々な箇所で登場します。トラムに乗って移動するシーン、中央駅のスタンドで立ちながら食事をとるシーンや、娘の家で食卓を囲むシーンなど、オラヴィを通してヘルシンキの暮らしを垣間見ることができるのも本作品の魅力です。

|現在のフィンランド映画界を代表するクラウス・ハロ監督

LifTe 北欧の暮らし フィンランド映画 ラスト・ディール クラウス・ハロ オールドチャーチパーク

Photo by Cata Portin

クラウス・ハロ監督は、間違いなく現在のフィンランドを代表する監督の一人です。2009年の『ヤコブへの手紙』では、徹底的に余計なセリフを排除することによって、登場人物の心情変化を浮き立たせ、2015年の『こころに剣士を』では、終戦後の混乱が続く50年代のエストニアを舞台に、実在したフェンシング選手と、エストニアの子供達のストーリーで多くの観客に勇気を与えました。

彼の強みは、セリフで多くを語らずとも心情を描写できる力。それは登場人物の表情だったり、スクリーンに映し出される街の様子や天気だったり、音楽だったり。今回の『ラスト・ディール』では、ヘルシンキの街並みがその役を買って出ています。

先ほど紹介した「エクベリ」や「アテネウム美術館」など、ヘルシンキを象徴するものも多く出てきますが、天気や公園の雰囲気など、人物の周りのトーンから、オラヴィを含めた登場人物がどのような心情なのかを推察しながら本作品を観ていくのもおすすめです。

柔らかい光、そして印象に残る陰影

LifTe 北欧の暮らし フィンランド映画 ラスト・ディール クラウス・ハロ

Photo by Cata Portin

そして、最後に注目してほしい点は、作品を通しての「光の使い方」。彼の前作『こころに剣士を』でも感じましたが、光の使い方が上手く、それぞれのカットがとても心に残ります。光のおかげで、人物の表情はもちろん、手の皺なども陰影がくっきりとして人物に深みを感じます。フィンランドを含めた北欧諸国は長い冬でも室内で快適に過ごすために間接照明を上手く取り入れています。クラウス・ハロ監督もそうであると推測されますが、この光の使い方は、フィンランド生まれの撮影監督トゥオーモ・フートリの功績も大きいと思います(『こころに剣士を』の撮影監督も担当)。

ストーリー、街並み、光、様々な見所がある『ラスト・ディール』オススメの1本です。


|『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』予告編

|キャスト・スタッフ

LifTe 北欧の暮らし フィンランド映画 ラスト・ディール クラウス・ハロ オークション

Photo by Cata Portin

出演:ヘイッキ・ノウシアイネン、ピルヨ・ロンカ、アモス・ブロテルス
監督:クラウス・ハロ『こころに剣士を』、『ヤコブへの手紙』
脚本:アナ・ヘイナマー
2018年/フィンランド/シネマスコープ/95分/フィンランド語・スウェーデン語・英語/英題:ONE LAST DEAL
後援:フィンランド大使館  配給:アルバトロス・フィルム、クロックワークス
『ラスト・ディール』オフィシャルサイトはこちら
2月28日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか公開
© Mamocita 2018



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